農水省の”傍流”次官、森長官の目論見は狂った、日米交渉のエースたち、警備主流派の不在

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★傍流からの抜擢

 今夏人事で注目を集めた農林水産省。2年間“君臨”した改革派の奥原正明事務次官(昭和54年、農水省入省)が退任し、トップの座に就いたのは、次官コースとされる水産庁や林野庁の長官を経験していない末松広行氏(58年)だった。「4年前に関東農政局長へ出た時、次官の目はなくなった」(局長級)と見られ、交流人事により2年間、経済産業省産業技術環境局長に出向していた。

 だが、小泉純一郎政権時代には、いわゆる「チーム飯島」の一員として首相官邸で汗を流している。その経験や「農業団体の利害をストレートに代弁するタイプでない」(課長)ことが評価され、奥原氏とそのバックにいる菅義偉(よしひで)官房長官に抜擢された。

 一方、自民党農林族や農業団体との関係が深い旧主流派は次々とパージされた。官房長を務め、私大出身の次官候補だった早大卒の荒川隆氏(57年)は農村振興局長で退職。昨夏に農水政策研究所長に異動した佐藤速水氏(59年)もそのまま役所を去った。予算課長、漁政部長と次官コースを歩んだ柄澤彰氏(58年)も政策統括官が最後のポストになった。

 末松氏の次を競うのは、59年組の水田正和官房長と大澤誠経営局長になるだろう。水田氏は仕事に対する責任感が人一倍強い。大澤氏は政策の説明能力が高く、明るい人柄を慕う関係者が多い。2人とも国際担当の審議官を経験しており、来年の人事では、水産庁長官と、対外交渉を担当する農水審議官のポストを分け合うとみられる。

★秩序は回復するか

「剛腕」「歴代最強」とうたわれた金融庁の森信親(のぶちか)長官(55年、旧大蔵省)が3年で退任、遠藤俊英長官(57年)が就任した。遠藤氏は監督局長からの昇格で、慣例からいえば順当だが、森氏の腹案と市場の見立ては氷見野(ひみの)良三金融国際審議官(58年)だった。「4年次官か」とまで噂された森氏の目論見はどこで狂ったのか。

 地方の金融機関に経営改革や統合を迫ってきた強引ともいえる森氏の手法は、地銀の反発が強く、公正取引委員会が「待った」をかけた案件もあった。公取委の杉本和行委員長(49年)は事務次官まで務め、旧大蔵省の序列でいえば森氏とは格が違う。

 にもかかわらず、森氏が肩で風を切れた背景には菅官房長官との太いパイプや麻生太郎財務相からの信頼があったから。また、森氏はその菅長官との関係を隠そうとしない一面があった。

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source : 文藝春秋 2018年10月号

genre : ニュース 政治