小室さん騒動は「開かれた皇室」の宿命なのか
保阪氏
「天皇制の崩壊」の危機感
先月26日に秋篠宮家の長女眞子さまと小室圭さんとの結婚会見が行われ、最終的に眞子さまは小室眞子さんとして皇室を離れることになりました。
9月に「ご結婚へ」と報道されて以来、この2カ月のあいだには、眞子さんの渡米や一時金の辞退、結婚に伴う儀式の中止、そして眞子さんが抱える複雑性PTSDのご病気公表など、次々と衝撃的な事実が報じられる中で2人は結婚を迎えました。
ご結婚を祝福する声がある一方で、世間では批判の嵐が吹き荒れたことも事実です。街頭では「結婚反対」を掲げた100人規模のデモ行進が行われ、小室さんの母佳代さんが詐欺罪で刑事告発されました。どちらも一時のから騒ぎかもしれませんが、皇族のご結婚という慶事にもかかわらず、このような出来事が続けざまに起きるなど前代未聞のことです。
今回の眞子さんのご結婚問題が皇室にもたらした影響は想像以上に大きく、このまま推移していくと天皇制の崩壊にも繋がりかねない——そんな危機感を私は抱くようになりました。
天皇家は少なくとも2000年以上の歴史を持ちます。近現代においても、「左翼陣営」が幾度となく「天皇制打倒」を掲げてきましたが、揺らぐことはありませんでした。しかし、それがたった一人、小室圭さんという青年が突如現れたことで、かつてない深刻な危機に瀕しているわけです。喩えるなら、蟻一匹が開けた穴によって巨大な堤が脆くも崩れ去るようなもので、私にとっては非常に大きな衝撃でした。
何も今日、明日にも崩れるというわけではありません。しかし、「小室さん騒動」は過去をさかのぼっても類例のない、皇室史上初の事件でした。この4年、徐々に広がった国民的な皇室不信は、この先も繰り返し波のように押し寄せ、天皇家を揺るがすことになる懸念もあります。2人の結婚で一件落着とはならず、今回明らかになった皇室の脆弱性への対処を誤れば、5年後、10年後には、巨大な堤を決壊させかねない事件だと思います。
皇室ご一家(宮内庁提供)
「国家主義」から「国民主義」へ
私は昭和史研究が専門で、かつて秩父宮妃の勢津子さまにお話を伺ったり、上皇ご夫妻に面談の機会をいただいたりしたことがあります。そういった時に、はっきりと感じられた「皇族としての誇り」が眞子さんには稀薄な感じがします。これは無視できない変化ですから、今回の眞子さんの結婚問題がどのような意味を持つのか正確に見定め、改めて皇室の歴史の中に位置づけることで、総括する必要があると考えました。そうすることで小室さん騒動の核心を浮き彫りにし、国民と皇室の間に広がった不信の溝を少しでも埋めるための一助になればと思っています。
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source : 文藝春秋 2021年12月号