市井の人々の話を聞き、その知識をラジオを通じて伝え続けた永六輔(1933~2016)。長くサポートした外山惠理氏が想いを明かす。
外山さん
物知りだけど気難しい人——。そんなイメージで見られがちな永六輔さんとの出会いは、2000年5月、「土曜ワイドラジオTOKYO 永六輔その新世界」のアシスタントに私が起用された時でした。当時、たくさんのリスナーから「外山で大丈夫か?」と不安視する手紙が番組に寄せられました。でも永さんはその一通一通に、「彼女のいいところを見てあげてください」と、私を擁護する返事を書いてくれていたんです。
「どこが気難しいの? 永さんってすごくいい人じゃない!」
と思いました。
「テレビ嫌い」と見られてもいましたが、決して嫌いなわけではなかった。ただ、今のテレビ番組に、“作り手の思い”がないことを危惧していました。自分で「面白い人」を探さずに、他の番組に出ているタレントを連れてきて、似たような番組を作る安直さに嫌気がさしていた。「自分で探す」という、番組作りの根幹をなす思想がない今のテレビ業界に興味を失っていたのです。
永六輔
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source : 文藝春秋 2022年1月号