2003年に打ち上げられ、7年越しに地球へ帰還した探査機「はやぶさ」。小惑星に着陸しサンプルを持ち帰るプロジェクトを世界で初めて成功に導いた川口淳一郎(66)の功績を、チームでともに闘った的川泰宣氏が語る。
的川氏
宇宙科学研究所に入ってきた川口くんに初めて会ったときは、「ちょっと神経質そうだな」という印象でした。実際に一緒に研究をするようになると、すぐ彼が大変優秀だとわかった。しかも相当な負けず嫌い。自分にも他人にも厳しかった。
けれど、決して妥協しない姿勢は、リーダーに不可欠なものでした。予算はないけれど、性能は世界一か、それ以上のものを作らねばならない。そんな矛盾したものを求められるプロジェクトでしたから。
その彼が、一度だけ弱音を吐いたときのことはよく覚えています。2009年11月、はやぶさを地球に還すためのエンジン4基すべてが故障するという、最大の危機が訪れます。2人で記者会見に臨みました。
通常、失敗を受けての会見では記者の方から厳しい質問が飛ぶものですが、そのときは様子がちがいました。「ここまでがんばったら胸を張って凱旋すればいいですよ」となにやら優しいのです。ふと隣を見ると、川口くんが泣いている。「おかしいな、慰められて泣くような男じゃないはずだが……」
川口淳一郎
有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。
記事もオンライン番組もすべて見放題
今だけ年額プラン50%OFF!
月額プラン
初回登録は初月300円・1ヶ月更新
1,200円/月
初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。
オススメ! 期間限定
年額プラン
10,800円一括払い・1年更新
450円/月
定価10,800円のところ、
2025/1/6㊊正午まで初年度5,400円
1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き
有料会員になると…
日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!
- 最新記事が発売前に読める
- 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
- 編集長による記事解説ニュースレターを配信
- 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
- 電子版オリジナル記事が読める
source : 文藝春秋 2022年1月号