平山周吉「満洲国グランドホテル」

文春BOOK倶楽部

中島 岳志 東京工業大学教授
エンタメ 読書

新天地に渡った日本人の群像

 満洲国は約13年間続いた。それは紛うことなき侵略の歴史だったが、戦後の日本人に、奇妙なロマンと郷愁を残した。満洲が内包する魔性とはいったい何なのか。

 満洲には様々な日本人の願望が投影された。「王道楽土」の理想、大陸への憧憬、一攫千金の夢、功名心、出世……。そこには野心家から曰く付きの人物まで、多くの人の欲望がうごめいていた。

 著者は1937年から38年ごろの満洲に焦点を当てる。そして、「映画のグランドホテル形式に倣って」多くの人物を登場させ、満洲の実像を浮かび上がらせようとする。

 ここには満洲国建国のプロセスは描かれない。崩壊のプロセスも描かれない。一方、本書は小林秀雄で始まり、小林秀雄で終わる。

 小林は1938年秋に、満洲を訪問している。そして、帰国後に「満洲の印象」という紀行文を書いた。ここには満洲のヨーロッパ的町並みや満鉄あじあ号の様子などは一切書かれていない。小林が読者を誘うのは、ソ連国境の町・黒河である。

有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。

記事もオンライン番組もすべて見放題
今だけ年額プラン50%OFF!

キャンペーン終了まで時間

月額プラン

初回登録は初月300円・1ヶ月更新

1,200円/月

初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。

オススメ! 期間限定

年額プラン

10,800円一括払い・1年更新

450円/月

定価10,800円のところ、
2025/1/6㊊正午まで初年度5,400円
1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き

電子版+雑誌プラン

12,000円一括払い・1年更新

1,000円/月

※1年分一括のお支払いとなります
※トートバッグ付き
雑誌プランについて詳しく見る

有料会員になると…

日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!

  • 最新記事が発売前に読める
  • 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
  • 編集長による記事解説ニュースレターを配信
  • 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
  • 電子版オリジナル記事が読める
有料会員についてもっと詳しく見る

source : 文藝春秋 2022年8月号

genre : エンタメ 読書