統一教会と関係を絶つ

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方針に沿えない人は自民党にいることはできない(聞き手・田﨑史郎)
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組織的関わりは「全くない」

 ――安倍晋三元総理銃撃事件の後、旧統一教会との関係をめぐって自民党に批判が集まっています。幹事長として、この問題にどう対処されますか?

 この問題は、旧統一教会との過去の関係をどう総括するかということと、今後どう対処するかという2つの面から考えなければならないと思っています。

 第1に過去の総括ですが、自民党として、旧統一教会や関連団体とは一切の組織的関わりはありません。これは今回、改めて関係部門に確認を取り、記録等も調べ、「全くない」ことが確認済みです。

 一方、わが党所属の複数の議員が旧統一教会と接点を持っていたことは、報道されているとおりです。国民から疑念を持たれるような行為はすべきではない、という観点から、すでに党所属議員には点検の上、関係を見直すよう要請しました。過去の行為について自ら丁寧に説明し、反省すべきは反省してほしい。各議員が点検した内容をまとめた後、党が全体像を把握します。

 第2に、今後どうするかですが、「旧統一教会及び関連団体とは一切関係を持たないこと、また、社会的に問題が指摘される他の団体とも関係を持たないこと」を党の方針として決定し、各議員に遵守を求めることにしました。私が本部長を務める党改革実行本部が5月に示した党運営の指針「自民党ガバナンスコード」にも新たに盛り込み、徹底したいと思います。

 ここで重要になるのが、旧統一教会とは関係を持たないという基本方針をきちんと遵守していくためのチェック体制です。

 旧統一教会と接点があった議員の説明では、「趣旨自体は問題ない」という判断で教団関係の会合に出席したり、「自分は知らなかったが事務所の判断で」祝電・秘書の代理出席をさせたりしていた模様です。

 しかし、これからは事務所任せにはしない。議員本人が責任を持って、出席が適切か、接点を持つことに問題がないかを事前にチェックする体制を、各事務所で早急に確立するよう要請します。チェック体制を強化するために、たとえばそのための研修を行うなど、党改革実行本部を中心に、党としての支援のあり方も考えているところです。

 選挙ではさまざまな方々から応援を頂きますから、「あの人からの応援はお断り」といったことはしていなかったと思います。ただ、今回の事態を踏まえるとこれまで以上に注意が必要です。そこで「一切関係を持たない」と党が方針を明示することで、それぞれに自覚と自制を促します。これによって、少なくとも自民党議員が選挙の際に応援要請をし、教団から組織的な応援を受けるといったことはなくなります。

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安倍晋三元首相

「脱統一教会」できない人はお断り

 もっとも、信教の自由は尊重されなければなりません。たとえば応援に来る方に「どの宗教を信じていますか」と聞くのは信教の自由に抵触しかねません。ただ、社会的に問題がある団体は話が別で、うまく区別をしていかなければいけないと思っています。具体的には、「我々はこういう考えでいます」とはっきり示した上で、応援をしてもらうかたちになるのだと思います。

 ――新しい方針を守らなかった議員は、党紀委員会にかけるなど処分の対象になるのでしょうか?

 これだけ要請するわけですから、方針は守ってもらわなければなりません。ただ、チェック漏れなどがないとは限らない。その際は速やかに報告させ、是正措置を取ります。

 今後は一切関係を持たないという方針に、ほぼ全員が従ってくれると思います。重大な決定ですから、方針に沿えない人には党にいてもらうことはできないと考えています。

 一方で、旧統一教会をめぐる問題は、議員との関わり以外の点からも、多角的に取り組む必要があります。

 第1に、被害者からの視点です。旧統一教会の関係で被害に遭われた人がいて、今も困難に直面している事実は、重く受け止めなければいけません。政府の対応にも問題があったのかもしれません。これから洗い直しますが、相談窓口を今まで以上に充実させ、必要な支援策があれば進める必要があります。

 第2に、政治への疑念を払拭する努力です。これはさきほどご紹介した新しい指針で示した通りです。

 第3に、どんな事情があっても人の命を奪うという行為はけっして許されるものではないということです。今回の発端は安倍元総理銃撃事件でしたが、容疑者が抱えていた背景事情を結びつけて正当化するような言説が一部にみられます。そのようなロジックを認めてしまえば、法治国家は成り立ちません。

 また、今回の事件が起きるまで、マスコミも含め、どれだけ問題提起をしてきたのかという点も考えてみる必要があると思います。こうした多くの点について、目を背けてはならないと感じています。

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関係が指摘された萩生田光一政調会長

安倍元総理の遺志を引き継ぐ

 ――さて、その安倍元総理ですが、政治家・安倍晋三からどんなことを学ばれましたか?

 ひとことで言うなら「信念の政治家」だったと思います。2007年に道半ばで総理の座から退かれた後、雌伏の時期を通じて、もう1度復帰をしてやりたいことを成し遂げるという強い信念があった。かなり厳しい時期があっても、そのための努力をされたのだと思います。

 2012年、政権復帰前の党大会で、当時政調会長だった私は「今の日本経済の問題はデフレである」という問題提起をしました。その直後に安倍元総理から電話があって、「全く同じ意見だ」と言われました。そして政権を奪還すると、すぐに大胆な金融緩和等のアベノミクスを進め、経済の再生を実現しました。

 平和安全法制の成立も大きな功績です。大変な反発を受けながらの決断でしたが、祖父の岸信介元首相が安保条約改定をなし遂げ、後世が正しく評価したことを、安倍元総理は心に刻んでいたはずです。現在の安全保障環境の中でやるべきことは、どんな批判があっても成し遂げるんだという強い覚悟を持っていました。

 第二次安倍政権以降、私も経済産業大臣、経済再生担当大臣、外務大臣を拝命し、党でも選対委員長、政調会長と、重要な仕事をする機会を与えていただきました。

 とりわけ「地球儀を俯瞰する外交」によって、国際社会での日本のプレゼンス向上に安倍元総理が大きな役割を果たしたのは間違いありません。日本の首脳はG7ではいつも1番端にいたのが、各国の指導者が「シンゾーはどう思うんだ?」と、話題の中心にいるようになりました。

 通商政策では、米国がTPPから離脱する中でも「日本が世界をリードする」という方針を貫き、日米貿易協定交渉等も共に取り組みました。

 私は安倍元総理とともに取り組んだこれらの経験を生かし、内外の厳しい課題を解決することで、遺志を引き継いでいきたいと思っています。

 ――一方、国葬という扱いが世論を二分していますが?

 さまざまな考えがあることは、重く受け止めたいと思っています。

 ただ、通算8年8カ月に及ぶ歴代最長の任期を務め、海外首脳からこれほど多くの弔意が寄せられている中で、各国代表の参列も得て、敬意と弔意を表す儀式を行うことは適切だと考えています。

 ただ国葬によって、喪に服すことや特定の価値観を国民に押し付けるものではありません。多様な価値観を否定するものではないということは申し上げておきます。

公明党との関係は悪くない

 ――7月の参院選では自民党が大勝しました。茂木さんが主導した国民民主党との連携と、野党分断が奏功したのではないですか?

 自民党は前々回(16年)の56議席、前回(19年)の57議席からさらに伸ばし、改選過半数の63議席を得ました。国民の皆様から「政治の安定」という大きな力を与えていただいたと思います。

 ご指摘のように、野党乱立がプラス要因として働いたのは確かです。ただ、それが最大の勝因とは思っていません。むしろ重点区への「選択と集中」が奏功したと考えています。

 全国32の1人区のうち、過去に厳しい結果だった東北6県と甲信越3県を最重点区と位置づけ、私も公示前から何度も足を運びました。岸田総理にも初日に福島、岩手、宮城、最終日に山梨、新潟に入ってもらいました。党をあげて取り組んだ結果、前々回1勝8敗だった9県で、今回は6勝3敗。勢力を完全に逆転できたのです。

 ただ、課題も残りました。比例代表では得票率が1ポイント減り、議席も1減でした。比例代表は内閣支持率の推移等にも左右され、コントロールが難しい。特に今回、与野党ともに既存政党の議席が伸びなかった。既存の政党に飽き足らない層が、維新、さらに参政党、れいわ新選組、NHK党などに流れたのです。

 新興政党の主張はシンプルで、尖っている。SNSを中心にした運動も浸透したようです。この新興3党で比例の50議席中4議席。合計で全比例票の1割以上を得ています。こうした新しい層にどうアプローチするか、政策面と広報面での対応を考えなければいけません。

 ――維新は自民党の敵ですか、味方ですか? また、公明党との関係が薄くなったと指摘されますが。

 維新は、おそらく新体制でも政策によって是々非々の対応になるでしょうし、それで結構だと思っています。憲法改正や安全保障政策については方向性が一致しており、国会でも協力できると思います。一方、消費税率引き下げの主張については現実的でなく、わが党とは隔たりがあるなと感じています。

 公明党との関係については「パイプが細くなった」と言われますが、決してそんなことはありません。今回も連携はうまく行ったと思っています。選挙区の自民党候補で推薦が出なかったのは岡山選挙区だけですが、ここの小野田紀美(茂木派)には独特のキャラクターがあり、勝てると思っていました。公明党とも話し合い、納得の上、推薦なしということでやりました。他の選挙区では緊密な連携ができており、決して公明党との間がギクシャクしているということはありません。

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source : 文藝春秋 2022年10月号

genre : ニュース 社会 政治