津本陽、日高六郎、森田童子、小島武夫、星由里子

蓋棺録

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 作家・津本陽(つもとよう)(本名・寅吉〔とらよし〕)は、歴史上の剣豪や武将をいきいきと蘇らせ、読者に闘う勇気を与えてくれた。

 1989(平成元)年に刊行された『下天は夢か』(全4巻)は、織田信長が尾張弁をまくしたてながら大活躍する、一風変わった歴史小説だった。しかし、爆発的に売れ始め、3カ月で総計80部を突破、この年だけで150万部に達した。「手ごたえはありましたが、これほど売れるとは思わなかった」。

 29(昭和4)年、和歌山市に生まれる。父親は家業の材木商を継いだが、昭和恐慌のさいに痛手をうけ、以後、地代で暮らしていた。旧制和歌山中学(現・桐蔭高校)をへて、旧制大阪専門学校(現・近畿大学)で学ぶ。

 戦後、東北大学法学部を卒業し、親のコネで大阪堂島にある化学肥料会社に入ったが、34歳で退社した。この間、結婚するさい、妻の実家が会社での評判を調べると、出世欲のない「三奇人のひとり」と見られていたという。

 故郷に帰って不動産会社を設立し、実家の土地や住宅からの収益を管理した。それまで無料で使っていた人たちもいて、何かと気疲れする仕事になった。このころ、神戸の同人誌『VIKING』に参加して小説を書き始める。「小説は読んでいたが、書くのは初めてで、改行で一字あけるのを知らなかった」。

 同誌に掲載された「丘の家」が直木賞候補になったのが67年、故郷・和歌山の古式捕鯨をテーマにした『深重の海』が同賞を受賞したのは78年だった。上京して本格的に作家生活に入るが、この頃、川口松太郎が編集者に「津本に剣豪ものを書かせなさい」と勧めたのが切っ掛けで、剣豪小説を書き始める。

 83年刊の『薩南示現流』、85年の『宮本武蔵』などがよく読まれた。自ら剣道にはげみ、抜刀術を身につけるだけでなく、大きな食肉をぶら下げ、実際に日本刀で切ってみて、その感触を作品にも反映させたといわれる。

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source : 文藝春秋 2018年08月号

genre : エンタメ 芸能