高血圧、糖尿病、貧血、関節リウマチ……
多火山列島である日本は、世界で最も温泉の数が多い温泉大国です。日本人は古来、温泉という文化に親しんできました。それは今でも変わらず、温泉地は観光における人気スポットです。環境省の調査によると、2017年の温泉地への宿泊者数はおよそ1億3200万人。単純計算すると、日本国民一人あたり、1年に1泊は温泉地に宿泊していることになるのです。
今でこそ温泉は、旅館で出される料理や、宿泊施設の設備が重要視されるなど、レジャーとしての側面が強くなってきています。
しかし、江戸時代まで遡れば、農民や漁民が農・漁閑期間中に、温泉地に2〜3週間滞在する「湯治」が一般的におこなわれていました。これは、日頃の疲れやストレスを解消し、次の仕事への体力と気力を養うという、健康づくりにとって大切な休養であり、現代のいわゆる「温泉療法」の原型であると私は考えています。
温泉療法は、温泉を効果的に利用することによって、体調を良い方向へ整えていこうとする療法です。現代では医学の1分野として研究がおこなわれるまでになりましたが、日本ではまだまだ研究活動は活発ではありません。むしろ、ヨーロッパの研究のほうがかなりのレベルまで進んでいます。
私は1978年から、1995年に定年退職するまで、北海道大学医学部附属温泉治療研究施設で温泉気候医学の研究に携わっていました。研究成果の発表はほとんどをヨーロッパでおこない、現地にある数々の温泉健康保養地を見学する機会に多々恵まれました。
例えば、ドイツに多く見られる保養地の「クアオルト」には、「クアミッテルハウス」と呼ばれる多目的治療施設が存在します。そこでは、日本のように温泉にただ入るだけではなく、飲泉、吸入(専用の吸入器で泉水を蒸気のようにして吸い込む方法)、火山灰や泥炭を使った泥浴、電気・磁気・水圧を利用した理学療法など、豊富なメニューが用意されています。
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source : 文藝春秋 2018年06月号