羽生善治 永世七冠に辿り着くまで

羽生 善治 将棋棋士
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初タイトルは19歳の竜王。まだまだ走り続けたい(インタビュー・構成 北野新太)

竜王戦に臨む羽生善治氏 ©文藝春秋

 勝利を確信して深く頷いた羽生の指先は、8四の地点に香車を打つ瞬間、微かに震えた――。
 終わりゆく平成という時代を通して、頂点で輝き続けた唯一の存在かもしれない。2017年12月5日、将棋の羽生善治棋聖は第30期竜王戦七番勝負第5局で渡辺明竜王(いずれも当時)を破り、4勝1敗で通算7期目の竜王位を獲得し「永世竜王」の資格を得た。成し遂げたのは、永久の栄誉となる称号を7つのタイトルで制覇する「永世七冠」の偉業。平成元(1989)年、当時史上最年少タイトルとなる19歳で竜王に就いた青年は、平成29年の終わりに47歳で99期目のタイトルを得て、再び前人未到の領域に辿り着いた。デビューから32年が経過してもなお光り輝いている。今、何を思っているのか、何を見つめているのかを聞いた。

 翌朝の会見で、思わず「夢なんじゃないかと思いました」と話してしまったことには理由があります。

 もうデビューした頃の記憶は朧気になっていますけど、やはり30年以上もの月日を重ねて今回このような形になることが出来たのだなあ、という感慨のような思いはありました。対局が終わった直後には深く実感を抱くことは出来ませんでしたけど、一夜が明けて目が覚めて、新聞を開いた時、終わったんだ、本当だ、良かったなと思ったんです。

 もう次のチャンスがあるかどうかは分からないと思っていました。最近の数年は竜王戦七番勝負から遠ざかっていて、挑戦者になる機会が再び訪れるのかということについて半信半疑な状態が続いていたので、自分にとって悔いが残らないシリーズにしたいということを開幕前に強く思っていました。

 6期目の竜王を獲得したのが2002年ですから、もう15年前です。長いといえば長い年月ですし、なんと言えばいいんでしょうか……遠ざかっているような感覚だったんです。20代の頃であれば、挑戦者になれなかった年があったとしても来年こそは近づいていくんだという気持ちで挑んでいけましたけど、遠ざかっていけばいくほどあまりリアリティを持てなくなりました。

 もちろん目標としてはあるんですけど、竜王戦は過去30年の歴史を振り返ってみても特に若い人が活躍している棋戦でもありますし、最近の2年くらいは他棋戦でも若い人たちに負かされる機会も多くなっていたので、手応えはずっと薄くなっていました。

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source : 文藝春秋 2018年02月号

genre : エンタメ 芸能