授業は中学レベル、20もの学科が募集停止
〈平成30(2018)年度獣医学部新設(国家戦略特別区域指定・愛媛県今治市)の構想に係わる「事業所アンケート調査」実施のお願い〉
そう題されたアンケート用紙が関係各所に郵送されてきたのは、今年2月初旬のことだ。
〈岡山理科大学は、この度、内閣府による今治市への大学獣医学部の新設のための運営主体の公募に応募し、同市が掲げる(1)「世界に冠たる先端ライフサイエンス研究」を行う国際教育拠点、(2)家畜・食料等を通じた感染症に関する「危機管理(水際対策)人材」の育成拠点となる大学獣医学部の設置を担当することとなりました。ついては、平成30(2018)4月に新しい獣医学部を開設すべく、その準備の一環として、各企業・機関・団体等の人事・採用ご担当のかたに、「事業所アンケート調査」へのご協力をお願いする次第です〉(原文ママ)
アンケートの送付先は、動物病院やペットクリニックをはじめ、動物園や水族館、医科学研究施設、医薬品や食品メーカー、農水省や厚労省といった官公庁、自治体にいたるまで幅広い。内閣府と文科省が1月4日、1校に限って認めた獣医学部新設の告示を受け、加計学園が急きょ実施したアンケート調査である。
肝心の学部開設の「年」を〈平成30(2018)4月〉と脱字してしまうように、いかにも慌てて作成した感が否めない。が、その実、新たな獣医学部の卒業生を受け入れてくれるかどうか、という需要動向調査は、来る文科省の学部設置認可の審査には欠かせない。新たな大学や学部を設置する場合、募集入学定員である入り口はもとより、卒業後の就職先があるかどうか、という進路の先行き見通しが不可欠だ。
しぜんアンケートには、〈「獣医学科」が育成する人材は社会的にニーズが高いと思われますか〉〈「獣医学科」で学んだ人材を将来採用したいと思われますか〉〈現時点で採用可能と思われる人数をお答えください〉という質問が並ぶ。さらに〈想定される進路〉として、動物病院などの〈動物愛護施設〉や〈動物園〉のほか、〈農林水産省獣医技術系職員、厚生労働省獣医系技官、食肉衛生検査所、家畜保健衛生所、畜水産試験場〉といった就職先を謳う。アンケートを見る限り、国家戦略という現政権の大方針の条件を満たすべく、最先端の獣医師養成を旗印に掲げた獣医学部新設計画に思える。加計学園が今治市の国家戦略特区で計画してきた6年制の獣医学科は160人の入学定員と国内最大、それに獣医保健看護学科の定員60名が加わるマンモス獣医学部だ。
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source : 文藝春秋 2017年09月号