歳を気にしない生き方こそ大切だ
文藝春秋2月号に加藤恭子氏が寄稿したエッセイが静かな話題を呼んでいる。「年齢を気にしすぎる日本人」と題されたその随筆で加藤氏は、アメリカ、フランスなどで生活した経験から、日本人は年齢を気にすることによって自分の可能性を狭めてはいないか、と綴った。
その随筆を読んだ英文学者でエッセイストの外山滋比古氏との対談が今回、実現した。90歳を超えてなおもベストセラーを出し続ける外山氏。老いてますます盛んな2人が、日本人や欧米人の年齢観や自身の人生観を語りつくした。
外山 加藤さんが、文藝春秋に寄稿した随筆を拝読しました。確かに日本人は必要以上に、年齢を気にする習性がありますね。僕は自分から年齢は言わないけれど、人からずいぶん言われるんです。それで「ああ、93歳になったのか」と認識するくらいです。でも自分自身の感覚では、10年前も今もさして変わらない。
加藤 私も自分の年齢の感覚がどこかに吹き飛んでしまっています。5月に88歳になったのですが、まったくその自覚がありません。「おいくつですか?」と聞かれても、「あれ、私いくつだったっけ?」となってしまう。エッセイにも書きましたが、少し前にある事務所で自分の年齢を書くことになって、63歳と書いてしまったこともあるくらいです。
外山 世間は高齢者とひとくくりにするけれども、当人たちは案外そんなものなんですよね。最近、佐藤愛子さんの『90歳。何がめでたい』がベストセラーになっているようですが、その影響なのか最近は僕の本も帯に「93歳の」とか、やたらと年齢が強調されるようになった。編集者がその方が売れると考えたのでしょう。
僕はああいう帯を喜ぶのは、70代だと踏んでいるんです。世間一般の70代は高齢者への第一歩を踏み出したばかりで、まだ高齢者に憧れがある。でも、80歳は現実を分かっているからそんなことを気にしないのではないでしょうか。
加藤 それは面白い見立てですね。確かに、理想の高齢者の生き方と言うものが、あるのかもしれません。
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source : 文藝春秋 2017年07月号