安倍一強政権といわれて久しい。このままいくと、来年九月の総裁選で、安倍首相が再選されることはほぼ確実だ。連続三選を禁じた党則も今年三月に改正されたので、安倍政権は、二〇二一年九月までつづきそうだ。
そうなると、安倍首相の在職日数は通算で三千五百日を超え、吉田茂(二千六百十六日)や佐藤栄作(二千七百九十八日)を超えるのはもちろん、伊藤博文(二千七百二十日)や桂太郎(二千八百八十六日)といった日本の歴史的大政治家たちと肩をならべることになりそうだ。といわれてもなんとなくピンとこない。目の前の国会審議で、大阪の森友学園に対する国有地払い下げ問題や、昭恵夫人問題やらでオタオタする姿を見ていると、この人が本当に伊藤博文、西園寺公望などとならぶ大政治家といえるのかと、頭をひねりたくなる。もちろん、現実には安倍首相はまだ千九百五十日ほどしか在職していない。小泉純一郎や、佐藤栄作の首相在職日数にも追いついておらず、戦後最長になるのはまだずっと先だ。まして史上最長になるのはまだまだ先の話だ。
しかし、何事もなければ、遠からず安倍政権はそういう領域に入っていきそうなのだ。
もちろんそれは、あくまでも「何事もなければ……」である。歴史を見れば、事実は
逆。何事もないどころか政治の世界ではほとんど確実にあるとき予測を裏切る事態が、突然出来する。
つい最近まで安倍政権をとりまく環境は、国内的にも、国際的にも順風満帆と見えた。国内政治では一強時代を謳歌。経済的にはアベノミクスが順調。外交的にはトランプ政権との関係が良好で(TPP破綻などの問題を残しながらも)、人間関係も親密で問題なしと見えた。
だがここにきて突然、暗雲が見えはじめた。今村復興相の連続問題発言による辞任、中川政務官の女性問題スキャンダル辞任など若手政治家の人材低劣化が明らかで、いずれ大破綻をきたすのではと思わせる。次の都議選で小池陣営に大敗北すると国政レベルの大変動が起きる恐れがある。
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source : 文藝春秋 2017年06月号