日ハム・大谷が振り返る広島・黒田の8球

鷲田 康 ジャーナリスト
エンタメ スポーツ

最初で最後の対決に込めた思いを明かす

黒田博樹選手(右)・大谷翔平選手 ©文藝春秋

 10月29日。マツダスタジアムで行われた日本シリーズ第6戦で北海道日本ハムファイターズが広島東洋カープを下して日本一に輝いた。第7戦に先発予定だった広島・黒田博樹は、その瞬間を独り食堂の椅子に座りテレビで見つめていた。

「もちろん投げたいという気持ちはありましたし、そのための準備もしていました」

 第7戦までもつれ込めば、中4日で登るはずだったマウンド。投げ合う相手は日本ハムの若きエース・大谷翔平だった。41歳の黒田と息子に近いこの22歳の若者との投げ合いは、広島ファンばかりかひょっとしたら日本ハムファンも含めて、日本中の野球ファンが望んでいた対決であったかもしれない。

 しかし、その夢対決の前に広島は敗れ、黒田の現役生活は静かに幕を閉じた。同時に2人の投手としての対決も永遠に封印されたのである。

 その4日前の10月25日。札幌ドームでのシリーズ第3戦で黒田は現役最後の先発マウンドに立った。

 日本ハムの先発オーダーの「3番・指名打者」には大谷がいた。投手としての対決はならなかったが、打者として黒田との対決に心踊らせていたのは、実は大谷だった。

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source : 文藝春秋 2017年01月号

genre : エンタメ スポーツ