我が子を「ゲーム依存」にしないために

「家族という病」を治す 7人の提言

樋口 進 医師・久里浜医療センター院長
ニュース 社会

ゲームとひきこもり、暴力はどう関係するのか

スマホの普及がゲームをより身近にする ©iStock.com

 元農林水産事務次官が長男(44)を刺殺した事件は、長男がオンラインゲーム「ドラゴンクエストⅩ」に耽溺し、定職につかず“ひきこもり”状態だったことがクローズアップされた。また、長期にわたって家庭内暴力が続いていたとも報じられている。

 ゲームに依存し、日常生活が困難になるケースについて、WHOは今年の5月、「ゲーム障害(以下、ゲーム依存)」として正式に国際疾病に認定している。

 厚生労働省によれば、現在、日本でオンラインゲームを含めた病的なインターネット依存が疑われる中高生の数は推計93万人と、過去5年間で倍増しているという。

 ゲーム依存とひきこもり、家庭内暴力にはどのような相関関係があるのか。そもそも、ゲーム依存に陥るきっかけは何か。

久里浜医療センター院長の精神科医・樋口進氏は、2011年に日本で初めての「インターネット依存専門治療外来」を開設するなど、日本におけるネット依存治療の第一人者として知られている。

 元農水次官の事件でも問題になっているゲーム依存は、ネット依存の一部です。ゲーム依存に絞った全国調査はまだ行なわれておらず、明確な実態はよくわかっていないのが現実ですが、特に若者を中心に、ゲーム依存の問題が深刻化していることは間違いありません。

 当院は「インターネット依存」という名目で外来を行なっているものの、患者さんの90%以上がゲームに依存しています。しかも、そのほぼ100%がオンラインゲームをやっている。ですから、現在では「ゲーム依存」外来と言ってもおかしくない状況なのです。

 こうしたゲーム依存の患者さんは、近年ますます増えています。特にここ1、2年ほどは、当院の予約が取りづらい状況が続いています。2カ月に1回の予約日には、開始初日の午前中だけで約300件の依頼が来ます。2カ月で私たちが診察できる患者さんは50人程度のため、許容量をはるかに超えています。

 本当は困っている方をもっと受け入れたい。しかし、ゲーム依存は、他の精神疾患よりも1人の患者さんを診るのに時間がかかるという事情があります。

 患者さんにはみな、同じような傾向があります。ゲームにはまってしまうと、部屋にこもりっきりになり、学校や会社に行かなくなる。そして、親が注意すれば暴言、暴力といった問題行動を起こす――。

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source : 文藝春秋 2019年8月号

genre : ニュース 社会