難民受け入れは時期尚早だ

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文化の違いを理解しない安易な同情は禁物である

曽野綾子 ©文藝春秋

 シリア難民のニュースを見るたび、頭を悩ませている。

 9月末、安倍晋三首相が国連総会の一般討論演説で、シリアやイラクの難民問題解決のため、970億円に上る支援を表明した。しかし、安倍首相は難民の受け入れについては言及することなく、

「人口問題として申し上げれば、我々は移民を受け入れる前に、女性の活躍であり、高齢者の活躍であり、出生率を上げていくにはまだまだ打つべき手がある」

 と語ったのである。

 安倍総理のこの発言に、国内外で批判が集まったという。海外では英ロイター通信が「安倍首相、シリア難民受け入れより国内問題解決が先」と報じ、国内でも日経新聞が「日本も他人ごとでは済まない」と書いた。

「日本も難民を受け入れるべきだ」と批判するのはたやすい。私個人の考えを言えば、移民を受け入れたいと思う。しかし、もし、私が仮に総理の立場であったとしても、それは簡単に発言できることではない。難民の受け入れに対し、国民に湧き上がるような動機がなければ、到底支持を得られないだろう。

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source : 文藝春秋 2015年12月号

genre : ニュース 社会 国際