現代最高の知性が読み解くギリシャ危機の恐るべき本質
ギリシャがふたたび世界を揺るがせている。
財政破綻の危機にあえぐギリシャは、三度目の金融支援の条件となる緊縮策を巡って、EU(欧州連合)などと対立。反緊縮を掲げるチプラス首相はEUなどが求める財政改革策の賛否を問う国民投票を七月五日に実施し、結果は「反対」が「賛成」を大差で上回った。
ところが、この「民意」をテコにEU側から譲歩を引き出そうとすると見られていたチプラス政権は、それが叶わないと悟ったのか、九日にはあっさり方針を百八十度転換。EUの緊縮案にほぼ沿った内容の財政改革案を提出したのである。これを受け、十三日、EUのユーロ圏首脳会議は、付加価値税の増税や年金改革、国有財産の売却などの徹底した緊縮案を含む財政改革案をギリシャが受け入れれば、三年間で最大八六〇億ユーロ(約一二兆円)などの新たな支援を行なうことに合意。ギリシャ議会でこの財政再建案が可決されたため、とりあえず、同国の財政破綻とユーロ圏離脱という事態は回避できたかに見える。
だが昨年末時点で既に三一七〇億ユーロ(約四三兆円)に膨らんでいる巨額債務の返済の目途はまったく立っておらず、問題は先送りされただけだとも指摘されている。
「IMF(国際通貨基金)も反対しているように、七月十三日の合意は、そもそも実行不可能です。ギリシャ経済を再生させるには、部分的にしろ全面的にしろ、ギリシャの負債が減免されなければならないのです。この合意は、各国首脳が愚かにも地球と月を接近させることに賛成票を投じたようなものなのです」
こう喝破するのは、エマニュエル・トッド氏。ソ連崩壊と米国衰退、そして「アラブの春」をいち早く予見した、フランスの歴史人口学者である。トッド氏は今年五月、『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』(文春新書)を上梓。冷戦終結、欧州統合、統一通貨ユーロ導入によって生み出され、一人勝ちを謳歌する「ドイツ帝国」が今、欧州をどのように「支配」し、それがどんな危機を招いているのか。また、彼らが今後、世界をどう動かしてゆくのかを、時に激越な語り口でリアルに洞察した。同書は十三万部を超えるベストセラーとなっている。
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source : 文藝春秋 2015年09月号