MPの目を盗んで闇米を運び隠退蔵物資を盗み出す。全国民が必死で「物資」を探していた
木田 徳岡さんは昭和五年一月生まれ、私は昭和三年九月生まれ。一学年違いですね。
徳岡 この年で現役なのは僕らぐらいだろうと、編集部に無理矢理、引っ張り出されてきました。夏なので戦争特集をやるから、二人の共通体験である戦後の闇市や闇屋の経験を語り残しておけと言うことです。
共通体験といっても、私は闇市に通った側ですが、先生は闇屋そのものだった。のちに哲学者になる先生が、よく厚かましくも闇屋なんてやりましたな(笑)。
木田 ご存じの通り、当時は本当に食べるものがなかったんですよ。
私は江田島の海軍兵学校で終戦を迎えましたが、家族は満州で、引き揚げることができないでいた。私には、帰るべき家がなかったのです。それで知人を頼って佐賀、東京と転々としながら闇屋の手伝いをして食いつなぎ、最終的には母の故郷、山形・鶴岡に落ち着きました。
昭和二十一年秋になって、母と姉二人、それに弟の四人は帰国できたのですが、父はシベリアに抑留されてしまった。ですから、自分だけ食べるのも大変だったのに、十七、八歳で家族四人を養わなくてはいけなくなったんです。小学校で代用教員の職を見つけましたが、とてもそれだけでは食べていけない。そこで、再び闇屋をやって、生活の足しにした。
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source : 文藝春秋 2014年09月号