中国はなぜ平気で噓をつくのか

特別寄稿 裏切りの中華文明研究

中西 輝政 京都大学名誉教授
ニュース 社会 国際 中国

戦闘機異常接近も毒ギョーザ事件も根は同じ「文明の病」なのだ

王冠中副総参謀長 ©時事通信

 六月十一日に起きた中国空軍の戦闘機による自衛隊機への異常接近事件とその続報を聞いて、「ああ、またか」と感じた人は少なくないでしょう。思い返せば、尖閣沖での中国漁船衝突事件や、フリゲート艦によるレーダー照射事件など、中国は非常に危険な挑発行為を繰り返してきました。

 しかし、私の言う「ああ、またか」はそれだけではありません。そこに、いかにも“中国的”と呼ぶほかない「嘘」の文化がつねに付随してきたことです。いや、むしろこの「嘘」、言い換えれば事実に対する根本的な軽視こそが、現在、日本のみならず世界の秩序を乱している「中国問題の本質」だと言っていい。なぜなら、それは中国文明そのものの成り立ちに起因するものだからです。

 まずは事の発端として、今年の五月と六月に相次いで起きた戦闘機異常接近事件を簡単に整理してみましょう。一つ目は、今年五月二十四日の午前十一時頃、東シナ海の日中中間線付近で起こりました。中国空軍のSu–27戦闘機が、自衛隊機二機に三十〜五十メートルの距離まで異常接近したというものです。自衛隊機は、海上自衛隊の画像情報収集機OP–3Cと航空自衛隊の電子情報収集機YS–11EBで、どちらも偵察任務を帯びた非武装の大型プロペラ機でした。それを中国のマッハ2クラスの二機編隊が、自衛隊機の後方から接近して前方へ追い抜いたというのですから、軍事的威嚇と言ってもよい極めて危険な行為です。

 そして、第二の事件です。先にも述べたように、六月十一日の午前十一時頃、東シナ海の公海上で、空自のYS–11EBを、そして正午頃には海自のOP–3Cを中国空軍のSu–27二機が後方から追い越し、最短で三十メートルの距離まで接近したと推定されています。音速で飛ぶ戦闘機にとって、数十メートルというのは非常にきわどい距離だというほかありません。これまでにも、中国海軍の戦闘機とアメリカ海軍の電子偵察機が空中衝突する海南島事件(二〇〇一年四月)が起きていますが、そうした惨事に至っても不思議ではなかったのです。

 興味深いのは、この後の中国の対応です。日本政府が正式に抗議すると、中国は「日本側の一方的な言いがかりだ」と応じました。そして翌十二日、「実は昨日は、日本の自衛隊機が中国の偵察機に三十メートルまで異常接近、飛行の安全に重大な影響を与えたのだ」と主張し、日本のF–15戦闘機が二機映っている映像まで公開したのです。

 しかし、いくつもの点で、この中国の言い分は成り立ちません。そもそも自衛隊機の映像を公開したところで、それが「中国の戦闘機が異常接近しなかった」という反論の根拠にはまったくなりません。しかも、この映像自体、日付、距離、状況のいずれも特定できず、なんら証拠とはいえないものです。

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source : 文藝春秋 2014年08月号

genre : ニュース 社会 国際 中国