「3.11で変わった。原発ゼロしかない」大反響を呼んだ「小泉発言」。
最初に報じたジャーナリストが、インタビューの一部始終を明かす
![](https://bunshun.ismcdn.jp/mwimgs/3/3/1600wm/img_334ab851351b329631d46bc96c1e28fb306853.jpg)
八月下旬、フィンランドの核廃棄物最終処分場などを視察した小泉純一郎元首相の話を聞く機会があった。「原発ゼロしかない」という小泉節のさわりを毎日新聞の私の政治コラム「風知草」で紹介したところ、予想外の反響があった。
インターネット上に公開した拙文には、三万を超える「いいね!」マークが寄せられ、元首相の主張に耳目が集まった。その後は小泉の講演会のたびに翌日の各紙面に「元首相が原発ゼロ発言」の記事。『週刊朝日』が講演会での発言内容を詳しく掲載するに至って、原発推進派をも巻き込んだ報道合戦に発展した。ここまでは、取材を求める報道陣の前に小泉本人が姿を現すことはなかった。
しかし、自説への反論が大きく報じられたと見るや、今度は講演会にテレビカメラを招き入れ、「脱原発」を語る元首相の映像が久しぶりにお茶の間に流れる事態となった。さらに、社説で発言を批判した読売新聞に自ら反論を寄稿するなど、相手の出方とタイミングを測りながらの「喧嘩上手」は相変わらずである。
フィンランドの最終処分場を視察
それにしても、小泉の「原発ゼロ」説法はなぜこれほど関心を集めるのか。
「原発ゼロ」は野党、リベラル派、市民運動の専売特許ではない。「原発推進、原発輸出の日本でいいのか」という疑問は保守政界、官僚、経済界に広く伏在している。原発推進論者だった小泉の転向は、伏流水が、いつか地表に噴き出す可能性を垣間見せた。小泉が注目を浴びる理由はそこにある。
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source : 文藝春秋 2013年12月号