インフレが世界秩序を破壊する

中野 剛志 評論家

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ニュース 経済 国際

「歴史は繰り返さないが、韻を踏む」――マーク・トウェイン

 

 世界は、およそ40年ぶりに高水準のインフレに見舞われている。各国政府は対応に追われ、日本でも、物価高騰対策を中心とした大型の経済対策が検討されている。

 もちろん目下の問題に対処するのも大事ではある。しかしながら、より大局的な視点に立って、このインフレがもつ歴史的な意味を考えてみることも必要であろう。そうすれば、今日の世界が直面している問題の根本が見えてくるようになるからである。

日本でもあらゆる商品が値上がり ©時事通信社

 インフレの歴史的な考察にあたっては、米ブランダイス大学の歴史学者デイヴィッド・H・フィッシャーによる研究が大いに参考になる。フィッシャーは、12世紀末から20世紀末までの800年間の物価の変動を研究し、「物価革命」とも言うべきインフレの波が4回あったと主張している。第一波は1180年から1350年まで、第二波は1470年から1660年まで、第三波は1729年から1820年まで、そして第四波は1896年からのおよそ百年間だというのである。

 フィッシャーの研究は1996年のものであり、その後については当然書かれていない。しかし、1990年代後半以降、特に先進国は高インフレからは無縁となり、むしろ低インフレが問題視されるようになっていた。したがって、第四波は1990年代には終わっていたものとみなすことができる。

 ところが2021年から、世界は再び高インフレに見舞われている。我々は、歴史上、5回目のインフレの波を経験しているのかもしれないのである。

インフレが既存の世界秩序を破壊する

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