34年の生涯で俳句や短歌を革新した正岡子規(1867〜1902)。俳人の夏井いつき氏が思う、俳句にとどまらない子規の魅力とは。
正岡子規というと、横顔の写真が浮かんでくる人も多いだろう。写真が貴重であった時代に、横を向いて撮るなんてのは、よっぽどのヘソまがりに違いあるまい、と思う。
子規が生まれたのは愛媛県松山。松山市立子規記念博物館名誉館長であった故天野祐吉さんが、松山の方言「よもだ」こそが、まさに子規の気質だと話されていたのを思い出す。天野さんは、子規の持つ反骨精神と、肩ひじ張らずユーモアで生きようとする精神を評価されていた。
そういえば、「子規」の名も、血を吐くまで啼くホトトギスの漢名だ。喀血した自身を、飄々とホトトギスに例えるなんぞは、子規の精神の明るさそのものだろう。
子規が、月並みに陥った俳句に異を唱え、革新しようとしたのも、まさに「よもだ」の精神だったのだろう。短歌の革新や、写生文もまた、因襲や理屈と戦う子規に他ならない。
近年、俳都松山で、例の横顔の写真以上によく見かけるのが、野球のユニホーム姿の写真だ。23歳の子規を写したものだが、野球にハマった彼は、ベースボールに「弄球」と訳を当て、松山にも野球を伝えた。
打者、走者、死球、飛球、直球などの子規の訳語は、現在も使われている。子規の雅号の1つ「野球(のボール)」は、幼名の升(のぼる)とベースボールから発想したものだという。
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source : 文藝春秋 2023年1月号