元営業マンで外様監督。異色の指揮官が語る人生と、勝つための方法論(取材・構成 生島淳)
大手町に帰ってきた選手たちの姿を見て、「本当に青山の学生たちは強かったんだな」と監督の私が思わず感心するほど素晴らしい走りでした。自立心旺盛な学生たちが最高の仕事をしてくれて、感謝の気持ちでいっぱいです。
青山学院大では二〇〇四年から長距離部門での強化が始まり、一時は廃部という危機にも直面しましたが、本当に半歩、半歩積み上げてきたものがようやく実を結びました。監督になってから十一年ですが、二十年、三十年という歳月が流れたような、一方で時間の経過はアッという間だった気もします。
新春に行われた箱根駅伝で青山学院大学は大会新記録をマーク、二位の駒澤大に十分以上の大差をつけて初優勝を達成。青山学院の創立百四十周年に華を添えた。チームを率いたのは就任十一年目の原晋監督。駅伝の監督といえば、競技実績が優先され、学閥意識も強い中で、原監督は箱根駅伝とは縁がない中京大の出身、また社会人での実績もほとんどなく、引退後はサラリーマン生活を送っていたいわゆる「外様監督」だ。多くの下馬評を覆す圧勝劇はなぜ生まれたのか。異色の指揮官が自身の手腕と人生を語る。
今回、優勝した後に「学生たちの表情が明るい。箱根のイメージを変える優勝ですね」と言っていただけました。私としてもたいへんうれしい言葉だったのですが、あの明るさは決して偶然生まれたわけではありません。青学大の指揮を執るようになっていろいろと試行錯誤してきましたが、選手を勧誘するにあたっては「タイム」よりも、表情や言葉の豊かな子や、走りに表現力があふれている選手を重視してきた結果だと思います。
青山キャンパスで行われた優勝報告会では、女子大生に囲まれた選手たちがピースサインをして写真に収まり、「他の学校じゃ、考えられない」と陸上関係者からは驚かれたりもしました。でも、今の大学生って、優勝したらこういう喜び方をするのが自然ですよね。だからこそ、一年間のつらい練習も耐えられる。「頑張ればまた、来年も女の子にモテる」というモチベーションがあるのも私は大切だと思います(笑)。
今回、五区の超人的な走りで「山の神」と呼ばれるようになった神野大地も、高校時代から走りで、大きな表現をする選手でした。彼の練習を初めて見たのは高校二年生の夏、菅平高原の合宿でしたが、ウサギのようにぴょんぴょん走っている姿を見て、「大きな走りをする子だなあ」と感心しました。
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source : 文藝春秋 2015年3月号