日本経済が低迷している。いわゆる失われた30年である。これを抜け出すには、会社の利益を増やすほかない。鍵はコーポレート・ガバナンスである。会社は経営者(リーダー)次第であり、コーポレート・ガバナンスはすぐれたリーダーを得るための仕組みなのである。
まずは非上場会社である。日本に約231万社あるとされる株式会社の99.8%は非上場会社である。非上場会社のコーポレート・ガバナンスを強化し、まっとうな経営者が経営を行えば、日本経済は活性化する。
〈大日本除虫菊って会社の株を0.5%相続したばっかりに、1億もの税金を取られてしまったという、嘘のような本当の話だ。〉
拙著『少数株主』における一文である。非上場会社である大日本除虫菊(「金鳥」)の少数株主に実際に起きた、265万円で済むと思った相続税が1億円以上に膨れ上がった事件である。
非上場会社では、少数株主が経営から排除されている。配当による株主への還元が全然行われず、少数株主が保有する株式は紙切れ同然という状況が多い。しかし、会社が内部留保をため込む結果、株式の相続税評価だけが異常に高くなるのだ。
この問題は、コーポレート・ガバナンスの欠如に原因がある。これにより経営者が株主への配当を行うことなく、自分と家族だけが報酬を取り、その余の利益を内部留保として積み上げることが横行しているのである。
だが、少数株主も無力ではない。
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source : 文藝春秋 2023年2月号