億円単位の資金提供。中国のやり口はえげつない
中国の偵察気球をF22戦闘機で撃墜し、バイデン大統領は毅然とした対応を取ったかのように見せました。しかし本当のところ右往左往していたというのが実態です。最初は、「無視」しようとし、その次は「問題ナシ」と判断し、そして最後になって「撃墜」を決断したのです。これでは中国に甘く見られても仕方がない。最初、中国が自国のものであると認めたのもバイデンの甘い対応を期待してのこと。懸念すべきは、今後も中国から出方を試されることが起るのか、あるいはもっと大胆な行動に出てこられる可能性もあるのか、ということです。この問いに対する答えは残念ながら、イエスだと言わざるを得ません。
アメリカ人の中国に対する懸念は深刻さを増しています。私の著書『レッド・ハンデッド――アメリカのエリートたちはどうやって中国を助け、金持ちになっているか』(ハーパーコリンズ社)が昨年、5週連続でニューヨーク・タイムズのベストセラーリストに載り続けたのはなぜかといえば、まず何より普通のアメリカ人が中国との競争の激しさを日に日に実感していることがあります。そして2つ目には、アメリカのリーダーシップがそれに対してきちんと対応していないのではないか、と国民から疑念を抱かれているということもあります。
気球に対する対応でバイデン大統領は厳しく叩かれました。共和党上院のミッチ・マコーネル院内総務は、「初期対応は決断力に欠け、遅きに失した」と言い、同じく共和党下院のマイク・ギャラガー議員は「なぜもっと早く撃墜しなかったのか。恥ずかしく理解できない」と猛烈に批判しました。
ここまで批判するのは、彼らが野党だからというだけでなく、バイデン家と中国との関係に根深い不信感があるからなのです。バイデン家と中国とのかかわりは、オバマ政権でバイデンが副大統領に就任してしばらくした後、2010年頃から始まりました。その年の春、大統領の次男ハンター・バイデン(53)が米国人ビジネスパートナーから中国訪問に誘われ、現地で政府高官に会っています。その中には政府系ファンド中国投資のプライベート・エクイティ部門のトップもいました。
エリート捕獲
なぜ、それほどの厚遇を受けたのか。それは、もちろん父ジョー・バイデンの存在があります。まだ米中蜜月時代ですから、バイデン副大統領は核安全保障サミットで胡錦涛国家主席と会い、四川大学や米中戦略経済対話の講演で、中国に好意的な見方を披露していました。オバマ政権の対中政策のキーパーソンとして浮上しつつあり、そこに中国側は目を付け、次男にも接近したのです。
当初、ハンターは彼のビジネスパートナーの「お飾り」だったようですが、中国側からの積極的なアプローチもあり、ハンター自身が中国におけるビジネスに深入りしていきます。もともと弁護士資格を持ち、金融関係の仕事をしてきたハンターは複数のファンドを立ち上げ、不動産業をやってみたり、商務省で働いたりで腰が定まらず、いずれ国政にと期待されていた兄ボー(デラウェア州司法長官だったが2015年死去)と比べると目立たない存在でした。
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source : 文藝春秋 2023年4月号