宝塚「性加害」の真相

原田 諒 脚本家・演出家
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私は昨年12月「性加害に及んだ演出家」と報道された。だが、内情は大きく異なり、歌劇団は私の退職までの真相を隠蔽している。人権問題さえをも孕む一連の問題を詳らかにする

 阪急電車を降りると、鈍色の空が重くのしかかってきた。

 2022年12月5日、午後3時半前。小糠雨の降る中、私は宝塚歌劇団の本拠地である終着駅の宝塚駅から2駅前で降り、売布(めふ)神社駅前にある公共施設の中の会議室へと急いだ。エレベーターで4階に上がると、ドアの前に総務部長が立っていた。案内されるがまま会議室に入ると、中には木場健之(こばけんし)宝塚歌劇団理事長と制作部長が並んで座っていた。

宝塚大劇場と阪急電車 Ⓒ時事通信社

「この2、3日でA側の態度が硬化している」

 私が席に着くや否や、木場理事長がそう切り出した。

「Aの母親が、あなたを宝塚歌劇団から出さなければ、10日の土曜日に文春に情報を渡すと言ってきた。土曜に情報を渡せば、月曜日には記事にしてもらえるらしい。もう記者ともコンタクトを取っていると言っている。Aの脅しを免れるために、9日付であなたは阪急電鉄の創遊事業本部に異動してもらうことに決定した」

 私は困惑した。

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source : 文藝春秋 2023年6月号

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