最近つくづく政治というものは面白いものだと思っている。何が面白いといって、政治の世界では、たびたび思いもかけないことがハプニング的に起り、それまで「これで決まり」と思われていたことが、突然引っくり返ることがあるからだ。
何の話をしているのかといえば、最近の週刊文春(1月28日号)のスクープ記事、「甘利明大臣事務所に賄賂1200万円を渡した」と、その政界への余波のことだ。
はじめこういう書き出しの原稿を書いていたら、政治の現実の展開のほうがはるかに早く、甘利経済再生大臣が説明責任を果たすための記者会見を開く予定と思ったら、アッという間に辞任表明の記者会見になってしまった。会見直後には石原伸晃氏が後任と決定されていた。安倍首相の周辺でここでモタモタしていたら、ほんものの政治危機を招きかねないという情勢判断があったのだろう。
安倍首相は、とっさの判断でとりあえずの危機は乗り切ったものの、夏に行われる参院選まで厳しい政争の日々が続くことになる。
この一件で何が引っくり返ったのかというと、安倍首相の独走態勢だろう。政界はついこの間まで「安倍一強時代」といわれ、安倍首相以外の政治家はほとんどなきが如しだった。しかし今は一転して安倍首相は「大丈夫かいな」という雰囲気になっている。
それにしてもあの週刊文春の報道はすごかった。雑誌の歴史に残る見事なスクープ記事といってよい。グラビア三ページ、活字六ページにわたる一大スクープで、金銭受け渡しについては現場写真あり、渡された現金五十万円のナマコピー写真あり。現場でのナマナマしいやりとりの情景描写あり(やりとりの録音あり)。領収書等の書類のコピーあり。現金を受けとって思わずニンマリ笑いをしている甘利大臣の秘書の写真あり。さらに「この日、私は甘利大臣に現金五十万円を渡しました」の証言とともに、甘利氏とのツーショット写真におさまっている支援者の写真あり、これでもかこれでもかというほど各種の証拠証言が次から次に出てくる。
甘利氏があそこで大臣をやめなかったら、続報に次ぐ続報が出て、事態は収拾がつかないものになっていただろう。
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source : 文藝春秋 2016年3月号