米国は、北朝鮮の核実験から4日後、B52を韓国に飛来させた。
北朝鮮が「水爆」実験だと胸を張るのなら、そうですか、それならホンモノの水爆をお見せしましょうか、との示威行為である。B52は水爆を搭載できる。
加えて、B52はバンカーバスター爆弾を搭載している。これは、地中深く破壊できる能力を持つ。北朝鮮に5000カ所あるとも言われる地下軍事施設もいざとなれば破壊できますから、との含意でもある。
ただ、こうした米国の反応は、北朝鮮としては想定内だっただろう。
北朝鮮の朝鮮中央通信は、金正恩第一書記が今回の核実験に対し「米国と帝国主義者の核戦争の危険から国の自主権と民族の生存権を守る自衛的措置だ」と話したと報じている。
しかも今回は、わざわざ「水爆」と宣言することで、単なる核保有国ではなく、米ロなどと肩を並べ得る「水爆保有国」であることを誇示しようとしたと読むべきであろう。さらに、北朝鮮は、核開発が対米交渉のための取引材料ではなく、対米抑止力のための国家戦略であることをより明確に示したと見るべきである。制裁の解除、外交関係の樹立、経済協力、平和協定の締結などを見返りにもはや核を手放す気は毛頭ない。
1994年の枠組み合意以降の米国主導の対北政策と、2005年の六者協議以降の中国主導の対北政策はいずれも非核化を前提としてきたから、これらの路線は破綻したことになる。
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source : 文藝春秋 2016年3月号