世論の7割近くが女性・女系天皇に賛成している。だが歴史上、女性天皇はいても、女系天皇はいなかった。令和新時代を迎えた今、皇位継承のあり方を改めて問う。
天皇の代替わりが無事に終わり、「令和」の時代が多くの国民から祝福されて始まった。そんななか改めて課題にあがっているのが、皇位継承のあり方である。
一昨年6月、「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」が成立した際、安定的な皇位継承を確保するための諸課題や女性宮家の創設などを特例法の施行後、速やかに検討することなどを求める付帯決議が採択された。
令和時代の皇室は、上皇陛下と天皇陛下をはじめ計18人の皇族で構成されているが、女性皇族は13人で、そのうちの6人が未婚。今後、女性皇族の結婚が続くと皇族全体の人数が減っていくことは明らかで、女性・女系天皇や女性宮家の創設を容認する声も大きくなってきた。共同通信が5月1、2日に実施した世論調査によれば、女性天皇を認めることに賛成は79.6%で、反対の13.3%をはるかに上回る。朝日新聞が4月19日付の朝刊に掲載した世論調査では、「女性天皇」について「女性もなれるようにした方がよい」が76%、「女系天皇」について「女系を認めてもよい」が74%、「女性宮家の創設」について「賛成」が50%となっている。
新時代の皇位継承の望ましいあり方とはどのようなものなのか。ノンフィクション作家の保阪正康氏、京都産業大学名誉教授の所功氏、国士舘大学特任教授の百地章氏、東京大学史料編纂所教授の本郷和人氏、国際政治学者の三浦瑠麗氏の5人が激論を交わした。
保阪 女性・女系天皇をめぐる本格的な議論は、小泉政権時代の平成16年12月に、「皇室典範に関する有識者会議」が設置されたことから始まります。当時の皇室は男性皇族がおよそ40年間も誕生しない状況が続き、「安定的な皇位継承」が危ぶまれていたからです。そして翌年11月に最終報告が取りまとめられ、女性とその子ども、つまり「女系」にも皇位継承権を認める方針が打ち出され、男女を区別せず直系の第一子を優先させること、女性皇族が民間人男性と結婚したあともそのまま皇族にとどまり、その夫も皇族になることなども盛り込まれました。この報告を受けて、小泉政権は当初、翌18年1月の通常国会に皇室典範改正案を提出する方針でしたが、同年2月に秋篠宮家の紀子さまのご懐妊が発表され、改正案の提出は見送られることになりました。
百地 皇位継承のあり方を、一人の学者として、気楽に議論することは可能でしょう。しかし、退位特例法の付帯決議には、「一 政府は、安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等について、皇族方の御年齢からしても先延ばしすることはできない重要な課題であることに鑑み、本法施行後速やかに(略)検討を行い、その結果を、速やかに国会に報告すること」「二 一の報告を受けた場合においては、国会は(略)『立法府の総意』が取りまとめられるよう検討を行うものとすること」とあります。それだけ重い責任が政府と国会に課されているわけです。ですから、ムードや安易な感情論ではなく、「皇室の伝統」と「憲法(と皇室典範などの法)」をきちんと踏まえて、この問題を考えるべきです。
三浦 もちろん、これまでの皇統の伝統や法律論も重要ですが、今そうした流れとは別なところから、“愛子天皇待望論”が出てきていますね。それがどういった趣旨や発想で出てきたのかも分析すべきでしょうね。
本郷 眞子さまと小室圭さんの騒動に端を発する秋篠宮家の問題も影響しているのでしょうね。
保阪 まずは「女性・女系天皇」の是非について議論しましょう。各種世論調査では大体7〜8割前後が賛成という数字が出ています。産経新聞とFNNの合同世論調査でも、「女性天皇」に賛成が78.3%、「女系天皇」に賛成が64.2%、「女性宮家の創設」に賛成が64.4%という数字が出ています。
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source : 文藝春秋 2019年7月号