混沌とする世界、日本人はどう生きるか。答えは先達の見事な人生の中にある――
この鼎談の様子を収めた【フル動画】保阪正康×田中優子×梯久美子×片山杜秀「大座談会 今なぜこの100人なのか」も公開しています。
――本日は、「現代の知性が選ぶ代表的日本人100人」というテーマで、皆さんにお集まりいただきました。『代表的日本人』というのは、1908年、明治の思想家であり、キリスト教徒の内村鑑三が物した本です。西欧社会に向けて、『Representative Men of Japan』という書名で英文で綴ったもので、出版されたのは日清戦争、日露戦争を経て、日本国内ではナショナリズムが高揚し、欧米では大国であるロシアを負かした東洋の小国・日本に世界が注目していた時代でした。内村は、西郷隆盛、上杉鷹山、二宮尊徳、中江藤樹、日蓮上人という5人の日本人の生涯と功績を描き、世界に向けて、日本人の持つ思想や美意識、文化を伝えました。翻って、現代では地球規模での感染症の流行が起こり、ウクライナ戦争は2年目に突入しました。世界の秩序が混沌としている今、あらためて日本人のアイデンティティを問い直し、日本人が将来に向かう指針とできるような日本人とは誰かを議論して頂きたいと思っています。まずは皆さんに挙げて頂いた5人について、理由も含めて、それぞれの人物についてご説明いただき、それを受けての感想もお話しいただけますか。まずは、保阪さんからお願いします。
保阪 私が選んだ5人は、必ずしも歴史上の存在感が大きい人物とは言えません。しかし、彼らは私たち日本人の歴史の“遺産”と言っていい人たちであり、今こそあえて脚光を浴びてしかるべき存在を選びました。
――1人目は秩父宮雍仁親王。昭和天皇の弟にあたる人物ですね。
保阪 そうです。彼は兄宮にもしものことがあったら、皇位を継承することになる第二皇子として育てられました。第二皇子というと聞こえはいいが、要は“スペア”であり、「天皇になるかもしれないが、天皇になることを自ら望んではいけない」という不安定な立場でした。さらに、明治天皇にも大正天皇にも弟宮はいなかったので、天皇家にも宮内省にも第二皇子をどのように育てるかという前例がありませんでした。いざというときのために、皇位継承の準備だけはしなくてはならないという残酷さを、母・貞明皇后はたびたび書簡で労っています。
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source : 文藝春秋 2023年8月号