小泉「『タマとったる!』くらいの勢いが消えた」
高橋「ゼレンスキーは国際政治のスーパースターに」
高橋 6月上旬から、ウクライナによるロシアへの反転攻勢が始まったとされています。この対談がおこなわれている時点(6月15日)での情勢を簡単におさらいすると、南部ザポリージャ州のトクマク、東部ドネツク州のヴェリカ・ノヴォシルカ、同じくドネツク州のバフムト、主に3つの地域で激しい戦闘がおこなわれています。
もう一つ、こちらは未確認ながら、バフムト近くのリマンからクレミンナに向けても戦闘がおこなわれているようです。ロシア・ウクライナとも、この戦域にかんしてはほとんどリリースを出していませんが、人工衛星のデータを確認すると、要所要所で火災が発生している。ウクライナ側がミサイル攻撃や砲撃を仕掛けていると考えられます。
小泉 今の状況が本格的な攻勢なのかはさておき、東部から南部にかけてのほぼ全エリアで、ウクライナ軍がロシア軍を圧迫しにかかっていることは確かですね。本来ならウクライナ軍は、ヘルソン州の方面でも攻勢をかけたかったはずです。そうやって全戦線で隈なく圧をかけて、上手くいったところに戦力を集中させるのが、当初の構想だったのではないでしょうか。
高橋 普通はそう考えますよね。全戦線で圧力をかけて、サイコロの6が出たところに第二陣を投入するのが定石です。
では本命はどこを狙うか。ウクライナ軍にとってはトクマクからメリトポリを狙うのが一番効果的ですが、そんなことはロシアも承知のうえで強固に陣地を張っている。となると、本命はヘルソン方面での渡河作戦ではないかと、私は当初考えていました。
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source : 文藝春秋 2023年8月号