大切なのは「認知力」ではない。「技術力」だ
4月19日、東京・池袋で87歳の男性が運転する車が歩行者をはね、母子2名が亡くなる痛ましい事故が起こりました。近年、高齢者による交通事故が注目されていますが、今回の事故を受け、マスメディアでは「高齢者の運転は是か非か」という議論がいっそう盛んになっています。
警察庁の統計によると、2018年の交通死亡事故は3449件で、うち75歳以上の高齢者によるものが460件。2008年はそれぞれ5025件、410件だったので、全体の死亡事故が減少傾向にあるなか、高齢者による死亡事故の割合は8.29%から13.3%と、直近10年間でかなり上昇していることがわかります。
私は約40年間、JAF(日本自動車連盟)系列の出版社に勤務し、機関誌『JAF Mate』の編集に携わってきました。2014年に退社した後は、高齢者安全運転支援研究会の理事長を務め、「高齢者が運転を楽しめるように」との想いで活動しています。私自身、72歳の高齢者ということもあり、「認知機能が運転に及ぼす影響」の研究には特に力を入れてきました。
わが会には、次のような相談をされる方々が時折いらっしゃいます。
「ウチのお父さんが運転を止めてくれないんです。高齢になって危険だから止めさせたいのですが……」
高齢になるにつれ、病気の有無にかかわらず、認知機能が次第に低下していくのは自然なこと。車の運転には、コミュニケーション力と認知力が求められます。歩行者、自転車、他車とのやり取り。信号の有無や道路環境への気配り……。75歳以上の免許更新では「認知機能検査」が行われていますが、運転という行為の特性を考えれば、それが基軸になるのは当然のことでしょう。
有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。
記事もオンライン番組もすべて見放題
初月300円で今すぐ新規登録!
初回登録は初月300円
月額プラン
1ヶ月更新
1,200円/月
初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。
年額プラン
10,800円一括払い・1年更新
900円/月
1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き
有料会員になると…
日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!
- 最新記事が発売前に読める
- 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
- 編集長による記事解説ニュースレターを配信
- 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
- 電子版オリジナル記事が読める
source : 文藝春秋 2019年7月号