平和をつくった専制君主
権力の主体が複数に分裂し、明確な国家像を設定しづらい中世史の中でも、とりわけ2人の天皇が並び立つ南北朝は錯綜している。鎌倉幕府を滅亡に導いた後醍醐天皇による建武の新政は3年足らずで瓦解、京都を制圧した足利尊氏は光明天皇を擁立する(北朝)。後醍醐は吉野に逃れて、自分こそが正統な天皇だと宣言する(南朝)。それぞれの天皇を旗印とする武士たちによる全国的内乱、そのなかで政権としての地歩を固めようとする室町幕府が、複雑に拮抗する時代である。
本書の主役足利義満(1358〜1408)は、足利尊氏の孫、室町幕府の第三代将軍だ。動乱を収束に導き、南北に分かれた皇統の合体を実現した。並行して幕府の体制を整備し、朝廷との関係を調整して公武統一政権を樹立した。さらに金閣寺に代表される北山文化・日明貿易の開始など、文化・外交面の達成も注目される。著者は、義満の偉業を支えるしたたかな政治手法、専制君主としてのすごみに注目する。また「合戦のない平和国家の骨格を創り上げた」点を彼の歴史的遺産として評価する。本書は「歴史上の傑物」たる義満の、誕生から卒去にいたる総合的な評伝である。
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source : 文藝春秋 2023年8月号