山里で暮らす人達は時折り不思議な出来事に山中で遭遇する。説明が付かない奇妙な体験の数々、これを私は山怪（さんかい）と呼んでいる。

　私が初めて山怪に触れたのはかれこれ30年以上前の事である。当時はマタギの取材で秋田県の阿仁（あに）町（現北秋田市）に足繁く通っていた。最もお世話になったのはマタギであり鍛冶屋の西根稔さんでよくウサギ狩りやクマ狩りそして山菜やキノコ採り等で一緒に山を巡ったものである。

　そんな折、西根さんから山中での奇妙な出来事について聞いた。

「この前山さ入ったら土管があってな」

「土管？　ですか」

「んだ。こんな所さ誰が置いたんだべって見てたらそれが動くんだぁ」

「動く？」

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