親鸞、易経、稲盛和夫……「栗山ノート」に記された先人たちの言葉
去る5月、任期満了に伴い、私は“侍ジャパン”の監督を退任しました。世界一を達成し、「次のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)でも監督を」と言ってくれる選手もいましたが、私の野球人としての戦いはおそらく今回が最後。ユニフォーム生活はこれでおしまいでしょう。
今だから告白しますが、侍ジャパンの監督に選ばれたときは、正直、不安しかありませんでした。最初のハードルは選手の選考です。
私が代表監督に選ばれた理由の一つには、エンゼルスで大活躍する大谷翔平との関係も含まれていたでしょう。明確に言われたわけではありませんが、翔平に参加してもらうことは自分に課せられた使命の一つと感じていました。それが叶わなければ私が監督をやることの意味も問われてしまう。
メジャーリーガーの招集には、高い壁があります。翔平だけでなく、メジャーの選手を招集するためには直接口説くしかない。そう考えた私は昨年8月、アメリカに向かいました。その機上でノートに書いたのがこの言葉です。
「武士道と云ふは死ぬ事と見つけたり」
これは佐賀藩士・山本常朝の言葉です。死を覚悟するくらいの気持ちで取り組むことで、自分がやるべきことをまっとうできる。全員から「NO」を突きつけられる可能性もある。それでも、彼らがどれほど侍ジャパンにとって必要な存在か、自分の想いを本人たちに伝えなければ、何も始まらない。命を懸けてでも全員の首を縦に振らせる――「出ます」と言ってもらうまでは日本に戻らない覚悟でした。
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source : 文藝春秋 2023年9月号