日本の顔 塩田千春

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塩田千春(しおた ちはる・アーティスト)
写真=榎本麻美(本社)

ベルリンでなら「アーティスト」でいられる

 小さな“個”が積み上げられ、やがて果てしない“集”になる。その緻密さが生む緊張感で見るものを圧倒する塩田千春(51)の素顔は、作品とは対照的にチャーミング。「『作品暗く、性格明るく』ってね」。

 鍵(かぎ)や靴、手紙に鞄——「いないけれど、その人の『存在』はあった」ことを感じさせるものを集め、作品にし続ける。ヴェネチア・ビエンナーレ(2015)では、日本館代表作家に選出された。

 1990年代の終わりにベルリンへ移住。市内にはまだ工事現場が多く、そこここに壁崩壊の痕跡が見えた。世界中からアーティストが集まり、空き家に住み着き、至るところにアートが生まれた。「日本では『自由業』は得体が知れないと思われるようで、アーティストというと、『何で食べてるんですか?』と聞かれちゃう(笑)。でもクリエイティブって、欠けた何かを満たしてくれるものですよね。人間は欠落だらけで、だからこそ私はアートを『生きる術』にしていられるのだと思います」。

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ベルリンのアトリエでスタッフと。空間全てを使う作品が多いが実は…「入口が狭いから、大きくて重い物は好きじゃない。運ぶのが大変でしょ?」

移住した27年前から主な移動は自転車で。窓枠を使った作品を作る際には、あちこちの工事現場で窓枠をもらっては荷台に括りつけて運んだ

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source : 文藝春秋 2023年9月号

genre : エンタメ アート ライフスタイル