「空気」より「ファクト」や「論理」で行動すべし
安宅 本日は、激動の時代を生きた大久保利通について、とくにその今日的意義について大いに議論したいのですが、僕は情報科学や神経科学が専門で、幕末明治の歴史は門外漢なので、期待とともに、偉大な政治家に泥を塗ることになりはしないかと不安もあります(笑)。
瀧井先生が昨年に出された『大久保利通――「知」を結ぶ指導者』(新潮選書)を拝読すると、幕末・明治の時代に一歩も二歩も先を見ていたことがよく分かります。明治維新の立役者だとは知っていましたが、「大久保のような化け物がいたからこそ、当時の日本は生きのびることができたのだ」と改めて感じました。
瀧井 安宅先生とは、昨年12月に岩倉使節団の研究者である泉三郎先生が主催する「岩倉使節団 米欧亜回覧の会」のシンポジウムでもご一緒しました。政治学者の五百籏頭眞先生や北岡伸一先生、経営コンサルタントで『文学部の逆襲』を書かれた波頭亮さん、万葉集の英訳を手掛けたピーター・マクミランさんなど、バラエティに富んだ方々が集まって、面白い会でしたね。
安宅 瀧井先生とは別のセッションでしたが、僕は「残すに値する未来を考える」というテーマで喋った記憶があります。
瀧井 安宅先生のご講演は、データサイエンティストならではの非常に多岐にわたる啓発的な内容で深く印象に残っています。
岩倉使節団150周年
安宅 今、パソコンを見たら、当日用意した、百何十枚もの大量のプレゼン資料が出てきました。COVID、シンギュラリティ、数理的思考、DAO(分散型自立組織)、少子化、そしてもちろん幕末についても触れています。ただ、自分で確かに話したはずなのですが、こんなに幅広いテーマをいったいどんな脈絡で結びつけて話したのでしょうか(笑)。
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source : 文藝春秋 2023年10月号