真の成長戦略とは何か。その話をする前に、まずは日本の現状が世界から見てどれくらい“ヤバい”のか、ご説明しましょう。
日本生産性本部の調査によると、2020年における日本の労働生産性は、1時間当たり49.5ドルと、主要先進国(G7)のなかでは最下位を記録し、アメリカと比べると6割の水準です。旗鑑産業とされる製造業に特化して見ても、2019年の日本の労働生産性水準は、OECDに加盟する主要31カ国の中では18位という低さです。
また、日本は世界第3位の経済大国と言われていますが、その立場も危うくなっている。2021年の世界のGDPランキングでは、3位の日本が4兆9400億ドル、4位のドイツが4兆2200億ドルです。人口がわずか8300万人の国に、日本は今にも追い抜かれそうになっているのです。
なぜ日本経済は停滞から抜け出せないのか、私達は今こそ真剣に考えなければなりません。
といっても、その理由は至極シンプルです。不連続的な技術革新期に突入し、加えて持続可能性が必須となった現実が、“本物の隕石”であると直視できていない。
世界の産業界の現状を説明すると、「オールドエコノミー」「ニューエコノミー」「第三勢力」と、三つの種類に分かれています。オールドエコノミーはハードな技術とアセットをベースとする大半の企業群。ニューエコノミーは、グーグルやテンセントなど、サイバーな技術やアセットをベースとするサイバー空間の企業群を指します。そして、新たな第三勢力は、ハードとサイバーな技術を共に使い倒し、リアル世界を刷新する企業群のこと。この第三勢力が次々と出て来て、変化に対応できていないオールドエコノミーを一気に蹴散らそうとしています。
第三勢力の代表格は、アメリカのテスラ社でしょう。彼らはモビリティではなくエネルギー会社を自負し、圧倒的な走行体験を生むEV車、蓄電・発電設備を組み合わせ電力グリッド不要かつ低環境負荷の世界を生み出そうとしています。昨年、私もテスラに乗り換えましたが、従来のクルマと異なりIoT(モノのインターネット)化により、機能は定常的に更新され、進化し続けます。AIをフル活用したスパコンがクルマの形で走っている感覚です。家で使う約1週間分の容量があるため、太陽光などの余剰電力の蓄電機能としても大きい。このように世界では産業の垣根が根本的に書き換わる新しいゲームが始まっているのです。
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