年間100機を超えるロケットが、1000を超える衛星を打ち上げる時代が到来している。世界のロケット打ち上げは2018年に年間100機を超えて以降、2022年は200機に迫る勢いだ。小型衛星の年間打ち上げ数は2020年に1000機の大台を突破、翌年に1700機を超えた。イーロン・マスクが2002年に創設した「スペースX」は今や年間60機超のロケットを打ち上げ、衛星コンステレーション(小型衛星の統合・運用システム)「スターリンク」では、既に3500機以上を打ち上げてブロードバンドサービスを開始。世界のコネクティビティを加速させている。
衛星コンステレーションによるブロードバンド事業は地上通信網との融合で5Gや6Gに貢献。スマホと衛星が直接通信する宇宙通信サービスも始まろうとしている。さらに、静止軌道、中軌道、低軌道の目的の異なる衛星を統合運用する、官民のハイパーコネクティッドネットワークの構築も進む。一方、地球観測衛星などが取得する「地球のビッグデータ」は、地上で取得される様々なデータと結びつき、災害対策、第一次産業のスマート化、保険・金融など、DXの進む分野に貢献している。
2021年は「第二の宇宙旅行元年」といわれるほど有人宇宙飛行の気運が高まった年であった。米スペースX社のクルードラゴンによる軌道飛行、米ヴァージンギャラクティック社やジェフ・ベゾス率いるブルーオリジン社によるサブオービタル(準軌道)宇宙旅行で、民間人による宇宙飛行が政府の宇宙飛行を初めて上回った。2022年に商業宇宙飛行士ミッションが始まった国際宇宙ステーションは、2030年に向けて民間が運用する商業宇宙ステーションへの移管期にあり、低軌道における一層の宇宙利用が促進されている。さらに、2022年11月に第一弾の新型ロケットが打ち上げられた「アルテミス計画」では、2025年に再び人類を月面に着陸させ恒久的有人探査を目指している。
商業宇宙開発や利用の進展に伴い、宇宙経済圏は低軌道から深宇宙へと拡がり、宇宙産業がめまぐるしいスピードで変革している現在、「規模の経済」が到来した。米モルガンスタンレーは世界の宇宙産業市場は2040年代には1兆ドルを超えると展望している。
3000社ものスタートアップ
宇宙商業化の中で政府は、一顧客として民間から宇宙輸送サービスや衛星データを購入、パラダイムシフトを起こすことで市場を創出し、投資を促してきた。日本では内閣府が2017年に策定した「宇宙産業ビジョン2030」で宇宙産業市場を2.5兆円に倍増させる目標を示し、2020年発行の「宇宙基本計画」には宇宙を推進力とする経済成長とイノベーションを目指す民間企業支援の具体策が盛り込まれている。
巨大IT企業やビリオネアの宇宙投資で始まった宇宙商業化の流れは、2015年を境にVC投資が10倍に跳ね上がり、飛躍した。2021年、宇宙関連スタートアップへの投資額は初めて100億ドルの大台を遥かに超え前年比1.5倍の145億ドルに。政府の宇宙開発にはなかった経営ノウハウも持ち込まれた。
世界にはおよそ3000社もの宇宙関連スタートアップが生まれ、2030年には1万社を超える見込みだ。特にこの2〜3年は成長を促すM&Aの増加など、宇宙投資のランドスケープは大きく変化した。市況が悪化する現在は、経営陣の刷新や事業モデルの見直しなど体質改善が進む。
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source : 文藝春秋 2023年2月号