中国不動産バブルは崩壊したのか――経済ブレーンが手を焼く習近平という障害

高口 康太 ジャーナリスト

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 上半期の赤字は1兆円弱――中国不動産デベロッパー最大手の碧桂園(カントリー・ガーデン)は決算報告で深刻な経営危機を明かした。同社だけではない。2年前に債務危機が表面化した恒大集団(エバーグランデ)は今年7月になってようやく2021年、2022年の決算を発表したが、2年で約11兆円の巨額赤字という信じられない数字となった。昨年末の負債総額は2兆4374億元(約49兆円)とこちらもすさまじい。

 かねてからバブルと言われてきた中国の不動産市場が暴落すれば、もう一つの時限爆弾に火が付きかねない。地方政府は第三セクター企業(Local Government Financing Vehicle、通称LGFV)に債券を発行させ、実質的な財源としてきた。その債務はなんと9兆ドル(約1300兆円)にまで積み上がっている。地方融資プラットフォームと呼ばれる、この時限爆弾が破裂すれば中国経済、いや世界全体にどれほどの影響が及ぶのか。

 このように、中国経済の先行きを悲観する議論が広がっている。雑誌やインターネットを見ると、久々に「中国経済はまもなく崩壊する」という話でにぎわっている。検索回数の多寡を指標化したサービス「グーグルトレンド」によると、2015年7月の株価急落、いわゆるチャイナショック以来の盛り上がりである。「中国経済崩壊」は一時期、人気コンテンツであったが、そうした論考に反していつまでたっても崩壊しないため下火となっていた。今、久方ぶりに復活しようとしているわけだ。

高口康太氏

 そうした盛り上がりの中で本稿はちょっと毛色が違う。「不動産バブルが崩壊し、中国経済はボロボロになる」と断言することもないが、一方で「中国経済に不安はない」という擁護でもない。「日本のバブル崩壊と同じことが起きている」と、なんとなくわかった気になれる説明でも終わらない。

 中国経済危機の深層を深掘りし、「打つ手のない苦境」ではないことを明らかにしつつも、それでも不安は残る……というややこしい構成になっている。というのも、今回の危機がもともと複雑な構造をしているためだ。

 一部で期待されているような、「中国はもう終わりなのだ」というわかりやすさではないが、中国経済に何が起こっているのかというややこしい全体像を、できうるかぎり平易に解説した。本稿を読んでいただければ、問題の構造がはっきりと理解できるはずだ。ぜひご一読いただきたい。

悪化する失業率と消費

 まず、現行の中国経済とその危機がどのようなものかを押さえておこう。

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source : 文藝春秋

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