梨園の母ドキドキ奮闘記

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長男・眞秀の初舞台。毎日が息苦しく、生きた心地がしなかった

 今年の「團菊祭五月大歌舞伎」で、長男が初代尾上眞秀(おのえまほろ)として初舞台を踏みました。

 初日が開(あ)くまでは、どうしていいかわからないほどドキドキして、生きた心地がしませんでした。

 初日の舞台を観ながら、夫(フランス人のアートディレクター、ローラン・グナシア氏)の手をずっと握っていました。思わず力が入っていたようで、あとで見たらローランの手に爪の跡がついていたくらい(笑)。でもローランも痛みを全然感じなかったそうで、それくらい彼も必死で観ていたんだと思います。終わったあとは、もう放心状態でした。

 この演目は眞秀のために書いていただいた『音菊眞秀若武者(おとにきくまことのわかむしゃ)』です。脚本は今井豊茂さん、演出は私の父・七代目尾上菊五郎が手掛け、舞台でも共演するという趣向です。講談や歌舞伎の題材となってきた豪傑・岩見重太郎の狒々(ひひ)退治の伝説をもとに、10歳の眞秀は女方と、男性の役である立役を務めました。

寺嶋眞秀(所属事務所提供)

 ご存じのかたもいらっしゃると思いますが、歌舞伎のお稽古は非常に短くて、全員揃ってできるのは、その月の歌舞伎興行が終わったあとの3、4日だけ。今回も同じでした。

 もちろんそれまでに眞秀も準備をしましたが、実際に出演する役者全員が集まると、ガラリと雰囲気や状況が変わるんですよね。そうなったとき、主役である彼がどこまで順応できるのか。

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source : 文藝春秋 2023年11月号

genre : エンタメ 芸能 教育