皇室問題で国論が二分しないために
1月22日、天皇家の長女・愛子さまが学習院大学を卒業後に、日本赤十字社に就職されることが報じられました。私はたいへん喜ばしいことだと感慨深く思うと同時に、あれからもう13年が経ってしまった――その事実に愕然としました。
2011年、私が内閣総理大臣だったとき、女性皇族が婚姻後も皇室に留まり、公務を行う「女性宮家」の創設を目指して検討を始めました。きっかけは羽毛田信吾宮内庁長官(当時)から、「皇族が減少していくことで、天皇陛下や特定の皇族に公務が集中している」という実情を伝えられたことでした。
すでに05年には、小泉純一郎内閣が「皇室典範に関する有識者会議」を立ち上げ、17回にわたる会議の結果、「女性、女系天皇を認める。皇位継承順位は長子優先」という報告書を出していました。
しかし06年、秋篠宮家に悠仁さまが誕生されたことで、ご存じの通り、世間の風向きは一気に変わりました。後を継いだ第一次安倍晋三政権は議論の前提が変わったとして、小泉政権が出した有識者会議の報告を白紙に戻しました。
しかし、問題は依然として残ったままでした。このまま女性皇族が結婚して皇籍を離脱されたら、ゆくゆくは皇室は悠仁さまお一人になってしまう。野田内閣が発足した時点で、愛子さまは9歳、悠仁さまが4歳でした。時間はさほど残されていない。女性宮家検討の背景には、その強い危機感がありました。しかし、第二次安倍内閣への政権交代により、議論はまたも頓挫してしまいます。あのときに何とか出来ていたら――今でも内心忸怩たる思いがあります。
17年に国会が天皇の生前退位のための「皇室典範特例法」を制定した際、女性宮家創設等の検討が求められ、ふたたび機運は高まりました。しかし、21年に出てきた有識者会議の最終報告は中途半端なものでした。その後は継続的な議論が重ねられたことはありません。政府の姿勢は怠慢と言わざるを得ないでしょう。
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