6月19日に「子どもの貧困対策法」の改正法「こどもの貧困解消法」が成立した。
〈貧困解消と法の目的を明確化し、子どもが適切な養育・教育・医療を受けられない、多様な体験の機会を得られないといった権利の侵害や社会からの孤立がないよう、対策を進める。/改正法の基本理念には、子どもの現在の貧困を解消するとともに将来の貧困を防ぐこと、貧困状態にある人の妊娠・出産から、子どもが大人になるまでの切れ目のない支援を行うことが新たに加わった〉(『朝日新聞』6月26日朝刊)
子どもの貧困の背景には、必ず大人の貧困がある。
〈貧困対策に取り組む公益財団法人「あすのば」(東京都)が、給付事業などの対象とした全国の生活保護受給世帯や住民税非課税世帯などの子どもや若者、保護者に実施した調査(二〇二三年)では、厳しい生活から抜け出せず、精神的にも苦しんでいる状況が明らかになった。/保護者四〇一二人に調査したところ、平均世帯年収は一七八万円で、七四%が貯蓄が五〇万円未満と回答〉(同上)
年収178万円で健康で文化的な生活をしていくことは難しい。
子供の貧困は命を脅かす問題
〈子どもや若者一八六二人(小学生以上)への調査では、朝食を「毎日食べる」小学生は六三%、中学生は五一%で、入浴を「毎日する」は小中学生いずれも七〇%だった。授業が「いつもわかる・だいたいわかる」は小学生で三七%、中学生で一六%。部活動に参加していないのは中学生で四二%、高校生で五〇%だった。/(略)小学生から高校生までに「孤独を感じることがある」か聞くと、三五%が「よくある・ときどきある」と答えた。「消えてしまいたい」と思うかどうかには「よくある・ときどきある」が一八%だった。/(略)あすのば代表理事の小河光治さんは「子どもの生活と精神的な状況が大変厳しい。『消えてしまいたい』は『死んでしまいたい』に近い声でもある。貧困は命を脅かす問題だと認識してほしい」と強調する〉(同上)
子どもの貧困とそれがもたらす問題を追体験できるのが川上未映子氏の長編小説『黄色い家』だ。ちなみにカバーと扉に記された英文タイトルは「SISTERS IN YELLOW(黄色の中での姉妹たち)」となっている。この方が、作品のテーマと合致しているように思える。この作品には男も出てくるが、暴力的であったり、盗癖があったりと不幸をもたらす者ばかりだ。苦しい状況に置かれた女を守り助けるのは、女だけであるというメッセージがこの作品の行間から伝わってくる。
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