【し】「触手」はダメなのか「マイ基準」の適用に注意

飯間 浩明 『三省堂国語辞典』編集委員
ニュース メディア

国語辞典編纂者の飯間浩明さんが“日本語のフシギ”を解き明かしていくコラムです

 ネットニュースの見出しに対する、SNSのある発言が注目を集めました。

 アマゾンウェブサービス(AWS)が、原子力発電所から直接に電力供給を受けることで合意に近づいた、とウォールストリートジャーナル日本版が報じました。毎日新聞電子版もそれを転載しました(7月4日)。

〈アマゾンなどIT大手が原発に触手、AI向け電力確保へ〉

 この見出しについて〈「食指」のつもりなんだろうけど、今の新聞社にはもうまともに校正のできる人材もおらんのだろうな〉とコメントがつきました。「食指を動かす」という慣用句があるので、「触手」でなく「食指」とすべきだというのです。この指摘に約1.8万件の「いいね」がつきました。

 一方、「触手」でいいのでは、と反対意見も出ました。「触手を伸ばす」と言いますからね。多くの人が発言し、元の発言者も後に「触手」でも間違いではない、と認めました。

「触手」も「食指」もダメではないと決着したのは幸いです。『三省堂国語辞典』第8版では、「触手を伸ばす」は〈野心を持って、手に入れようとはたらきかける〉。また、「食指が動く」は〈自分のものにしたい気持ちになる〉で、「食指を動かす」の形も示しています。先の記事の場合、より積極的な「触手(を伸ばす)」のほうが感じが出るかな。でも、どちらも問題ないでしょう。

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source : 文藝春秋 2024年9月号

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