女優の京(きょう)マチ子(こ)(本名・矢野元子)は、ボリュームのある肢体で「肉体女優」と呼ばれたが、世界的評価を得て「国際女優」へと変身した。
1950(昭和25)年公開の黒澤明監督『羅生門』では、4人の異なる証言による女性を演じ分け、作品はヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞。53年の溝口健二監督『雨月物語』でも同銀獅子賞を得るのに貢献し、同年の衣笠貞之助監督『地獄門』にもカンヌ国際映画祭パルム・ドールをもたらして「グランプリ女優」と称賛された。
24(大正13)年、大阪市に生まれる。3歳のとき父親が南米に行って、帰ってこなかったため母親に育てられた。ボタン行商を営む伯父が何かと面倒をみたが、しばしば少女歌劇にも連れて行ってくれたという。
13歳で大阪松竹少女歌劇団(後のOSK日本歌劇団)に入団し、24歳のときブギウギを踊って評判になる。そこで大映の幹部が会ってみたが、大阪弁丸出しのニキビ面でがっかり。ところが、試し撮りしたフィルムを見ると独特のオーラがあった。
49年公開の『痴人の愛』では、我儘な女ナオミを演じて「ヴァンプ(妖婦)女優」と呼ばれた。翌年の『浅草の肌』でも、肉体美をさらす蠱惑的な女を演じたので「肉体女優」が定着しかけた。
転機となったのは、やはり『羅生門』だった。原節子に決めていた武士の妻役を見事に代演してみせたので、大物監督たちが競って声をかけるようになる。また海外での評価も急速に上昇した。
しかし、周囲の評判に振り回されることなく、『いとはん物語』や『大阪の女』などで大阪弁のコメディエンヌぶりを発揮し、『夜の蝶』や『女系家族』などでは女の虚栄心と嫉妬を鮮やかに演じてファンの溜息をさそった。
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