「私には夢がある。それは、いつの日か、日本に潜入記者が10人、いや100人生まれることだ」
9月に刊行した『潜入取材、全手法』(角川新書)の冒頭に、そう書いた。
もちろん、キング牧師の名演説のパクリである。
冒頭の一文を書いた時、頭の中にあったのは、私が“潜入取材大国”と呼んでいるイギリスである。
1990年代に取材でイギリスを訪れた時のこと。
ホテルで夕方のニュース番組を見ていると、隠しカメラを持った取材班が、地元で麻薬を違法に販売しているというウワサがあるパパママストアで麻薬を買おうとする。麻薬を販売する瞬間をカメラに収め、「犯人逮捕」とばかりに放映するのを見た。日本のほのぼのとした夕方のニュースとは対極にある硬派な調査報道に腰を抜かしそうになった。
それだけではない。
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source : 文藝春秋 2024年12月号