アメリカの民主主義が死んだ日

この国をいかに守るか

横田 増生 ジャーナリスト
ニュース 社会
横田増生氏 ©文藝春秋

 2022年11月に行われた中間選挙では、与党・民主党が上院の過半数を握り、野党・共和党が辛うじて下院を取った。中間選挙は現職の大統領を擁する与党への審判という意味合いが強く、与党が大敗し野党が大きく票を伸ばすのが常だ。過去100年において与党が勝ったのは大恐慌時代のルーズベルト政権と9・11後のブッシュ政権の2回だけだ。

 今回、3回目の例外的な野党の“敗北”に終わったのは、中間選挙後早々に出馬宣言するとみられたドナルド・トランプ(76)が原因だ。トランプの出馬宣言が無党派層ばかりか、穏健な共和党員までも民主党に押しやった。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、トランプを「最大の敗者」と名指しした。

 4年間の大統領在任期間中、トランプは議会で2度の弾劾訴追を受けた史上初の大統領となり、ワシントン・ポスト紙によると、その4年間に3万回以上のウソをついた。その中でも最大のウソは、20年の大統領選挙で投票が不正に操作されたため負けた、というものだ。

 トランプのウソを“証明”するため、その信者たちが連邦議会議事堂を襲撃したのは21年1月。現地で1年間にわたり大統領選挙を取材していた私はこの襲撃事件を目の当たりにし、「今日、アメリカの民主主義が死んだ」とノートに走り書きした。

 トランプがそのウソを死守したまま24年の選挙への立候補を表明したことが裏目に出た。「トランプ疲れ」という言葉も生まれた。混沌とした状況を作り出すことで求心力を維持してきたトランプの政治手法が賞味期限切れを迎えたのだ。

 15年に最初の出馬を宣言した時、トランプは大胆な手法を取った。メキシコからの移民を犯罪者呼ばわりし、イスラム教徒の脅威を煽ったのだ。アメリカではタブーとされる「人種カード」を大胆に切ったことで大統領にまでなったのは事実だ。

 “移民の国”アメリカで、どうしてこのような反移民政策を掲げる政治家が大統領の座に上り詰めることができたのか。その背景には、アメリカの人口比の変化がある。20年における人口の人種別割合をみると、白人が約6割、ヒスパニック系が2割弱、黒人が1割強、アジア系――と続く。それが45年には白人の割合が全体の5割を切るとされている。

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source : 文藝春秋 2023年2月号

genre : ニュース 社会