世界4大ツアー優勝の鍵は体力・家族・鈍感力

短期集中連載 最終回

青木 功 プロゴルファー
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帝王ニクラウスにはスイングもパターも否定された

「プロになって6年目の冬、私の人生観を大きく変える出来事があった。1968年の日本プロで3位に入賞した私はアジア各国を回る極東サーキットの出場権を得て、翌年、フィリピン、タイ、マレーシア、シンガポール、香港、台湾の大会を回った。千葉の片田舎に育った私にとって、国外でのプレーは初めての経験。刺激的な毎日だった。

 あるとき、飛行機の窓から日本を見てね、ふと地上では気にも留めなかったことが妙に気になったんだ。常夏の島と呼ばれるハワイはどんなだろう。アメリカやヨーロッパにはどんなゴルフ場があるのか。俄然、もっと海外に出てみたくなった。あの時、空から日本を見ていなければ、私は海外のメジャーに挑戦することはなかったかもしれない。それくらい強烈な体験だったんだ」

 今年、プロゴルファーとして60年の節目を迎えた青木功。10月25日には文化功労者に選ばれた彼がレジェンドと言われる所以は、日本人プロゴルファーとして唯一、米欧豪日の「世界4大ツアー」において優勝という快挙を達成しているからだ。

「人は私を“世界のアオキ”と呼ぶけれど、自分ではそんな風に言ったことは一度もないし、考えたこともなかったよ。特に64年にプロになってからしばらくの間は、国内でさえ1勝もできない三流の選手だった。71年にようやく初勝利を挙げ、72年に2勝目。前回に話した鹿野山での特訓を経て、73年には6勝できた。持久力をつけるために走り込み、腹筋や背筋を鍛え、肩甲骨や股関節の可動域を広げるストレッチにも取り組んだ。

 よし、これからどんどん勝っていくぞ! そう思っていた頃、届いたのがアメリカのマスターズ委員会からの招待状だ。やったぞ、ついに俺もオーガスタに行ける! 飛び上がるほど嬉しかったし、興奮したよ」

こんなに美しいコースが

 34年、米国・ジョージア州のオーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブで創設されたマスターズ・トーナメントは、世界各地の賞金ランキング上位者、メジャーツアー優勝者などのマスター(名手)だけが招待されるゴルフの祭典。青木は74年4月、ゴルファーなら誰もが一度は憧れる夢の大舞台に立った。

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source : 文藝春秋 2024年12月号

genre : エンタメ スポーツ ライフスタイル