安倍元首相がカートで話し込む“ゴルフ外交”を見た
「埼玉の大宮ゴルフコース、今でも鮮明に覚えているよ。1964年、2度目のプロテストだった。5オーバーしか出来ない状況で、16番まで来て4オーバー。あと1ストロークしか落とせない。失敗すれば、またあのウンザリした研修生生活に逆戻りだ。
それなのに、17番の第2打を引っかけて、グリーン左のバンカーに打ちこんだ。サンドウェッジを持ってバンカーに入ったら、身体がガタガタ震え出してね。『絶対にベタピンに寄せてやる』って気合いが入って、武者震いを止められなかった。
蟻地獄のような我孫子(ゴルフ倶楽部)育ちだから、バンカーには自信があったんだ。打つと、ボールはフワッと舞い上がってグリーンをピンに向かって転がっていった。そして、そのままカップに吸い込まれたんだ。思えば、昔からアップダウンの激しいゴルフをやっていたんだよね(笑)」
2024年6月、ゴルフ界のレジェンド、青木功(82)がプロ生活60年の節目を迎えた。その生きるレジェンドが自らのゴルフ人生を、華麗なる人間関係とともに振り返る、インタビュー連載第1回。
「あの年に合格してプロゴルファーになって今年で60年。長いようで、あっという間だった。ゴルフは他のスポーツに比べて選手寿命が長いと言われるけど、一線で活躍できるのは、頑張っても25年くらいじゃないかな。
私の場合、15歳からゴルフ場での研修生生活を始めて、プロテストに合格したのは22歳。そこから1勝するまでに7年かかったから、遠回りした分だけ後ろの人生が長引いたのかもしれないね。
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source : 文藝春秋 2024年10月号