大樹が育つような明るい成功譚
棟方志功の版画を見たときに感じた、生き生きとしてエネルギーに満ちて、どこかいたずらっぽい雰囲気を、本書を読んでいるときにも感じた。本書は棟方の妻目線で彼の版画家人生が語られ、物語が進んでいくが、ゴッホの絵がキーになっている。棟方がここまでゴッホの絵に心動かされて、画家になる決心までしたとは知らなかった。素人目には全然違う作風にも見えるけれど、荒れ狂う情熱を持った画家の魂同士が、深い部分で共鳴し合ったのかもしれない。
男性の有名画家というと、女性関係では有名な逸話のある人も多い印象だが、そういう人たちは“まあ、天才だからね……”といった論調で悪事をみのがされてるような気がする。でも棟方は、本書を読んだ限り、奥さんと子どもを大事にした、天真爛漫な人だったようだ。奥さんも戦争のときに、空襲を受ける前、命がけで疎開先から棟方の板木を東京の家に取りに行ったとか、夫婦愛のエピソードも胸に残る。
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source : 文藝春秋 2024年12月号