クロネコヤマトの生みの親、小倉昌男(1924〜2005)が晩年、障害者福祉にかけた思いを、ジャーナリストの森健氏が綴る。
現代の物流に欠かせない宅配便。その源流、「宅急便」を開発したのがヤマト運輸(現ヤマトホールディングス)の小倉昌男だ。
1970年代半ば、個人が荷物を送る手段は郵便局に持ち込む郵便小包しかなかった。一方、ヤマトの経営も厳しい状況だった。当時の物流の花形は電気製品などを関西から関東に運ぶ長距離輸送。ヤマトは参入に遅れ、後塵を拝していた。
そんな中、小倉は家庭の小荷物を集荷・配送できるサービスを開発した。電話一本で集荷に行き、翌日に届けるネットワーク。宅急便と名付け、1976(昭和51)年1月、関東一円からサービスを開始した。
ニーズは大きかった。取扱個数が初年度で170万個、3年後に2226万個、と急激な伸びを示した。まもなくゴルフ宅急便(84年)、クール宅急便(87年)などを展開。93年に5億個、2004年には10億個を超え、ヤマトは日本の物流の土台を担う企業に成長した。
経営の座にあった頃、小倉はメディアで「闘士」と評された。官に楯突き、規制緩和も主張したためだ。
80年代半ばの運送業では、運送範囲や積載物の種類などについて運輸省(現国土交通省)の路線免許の認可が必要だった。だが、ヤマトが申請しても運輸省は認可を出さず、5年も待たされる状況が続いた。そこで小倉は86年、不作為の違法として運輸省を提訴。事業者が監督官庁を訴えるという前代未聞の振る舞いに出た。提訴後、免許は4カ月で交付されたが、この行動が小倉に闘士というイメージを与えた。90年代に規制緩和の潮流が広がる中、小倉は「規制緩和の闘士」として取り上げられるようになった。
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